産科・婦人科

産科・婦人科の紹介・特色

土田 達
主任医長:土田 達

ハイリスク妊娠から正常分娩まで

 当院では、平成16年5月より福井県総合周産期母子医療センターが併設され、ハイリスク妊娠、分娩を受け入れ、各地域の診療所や病院の先生方よりご紹介を受けています。また緊急の場合には母体搬送の形をとり、救急車や場合によっては若狭地区から緊急ヘリコプターなどでの搬送も受けています。最近は少子高齢化の時代と言われていますが、不妊治療や高齢妊娠の増加などにより、多胎妊娠や妊娠高血圧症候群、前置胎盤等の産科合併妊娠、高血圧や糖尿病など内科疾患合併妊娠、各種悪性腫瘍合併などの妊娠はむしろ増加しています。当院ではこれらの妊娠分娩に対して充分な対応が取れるよう、産科MFICUと低出生体重児等を管理する新生児NICUをそろえた独立看護単位を用意し、その対応に当たっています。

 さらに隔週水曜日には、胎児心エコー専門医の新井隆成先生にお越し願い、胎児の心臓を始めとする超音波検査を行い、ハイリスクの方々の診察を行っています。

 また正常分娩となる方も多数お越しいただき、年間分娩数は500件以上となっています。特に助産師数は31名と県内の分娩施設では最も多く勤務しており、外来での妊婦さんへの個別指導や助産師外来を通じて、また分娩体位の工夫などを行い、皆さんが正常分娩にいたるように産科医師とともに励んでいます。さらに母乳の大切さについてもお母様一人ひとりと顔を向き合わせながらお話し、母乳育児の推進に努めています。

良性腫瘍では傷を残さない治療を、がんは婦人科腫瘍専門医が低侵襲手術を

 子宮筋腫等で子宮を摘出する場合、膣式に摘出しお腹に傷を残さない腟式子宮全摘術を積極的に行っています。また腟式に子宮摘出が困難な方や、良性の卵巣腫瘍などに対しても、腹腔鏡手術(内視鏡手術)を積極的に取り入れ、手術件数も年々増加し平成25年には50件以上の腹腔鏡手術を行いました。平成26年4月からは、内視鏡専門医の田中政彰がスタッフに加わり、最新の技術を今後も取り入れながら、美容や入院期間短縮に寄与したいと考えています。

 また平成25年度より県立病院がん医療センターに婦人科腫瘍部門が加わり、悪性腫瘍の治療にも力を入れています。日本がん治療認定医機構認定がん治療専門医、日本婦人科腫瘍学会認定婦人科腫瘍専門医、また日本臨床細胞学会認定の細胞診専門医を中心として診断治療などを行います。

 最近若い方の子宮がん、卵巣がんの割合が増加していますが、そういう方々に対しては妊娠も視野に入れた治療が可能な場合もあり、積極的に妊孕性温存治療を行っています。子宮頚がんの発生には、性交渉により男女間で感染するヒトパピローマウィールス(HPV)が関与することが分かっています。福井県でもHPV感染が広まっており、これに伴い若い方の子宮頚部の異形上皮、上皮内がん(前がん病変)の方が増え、結婚、妊娠を前にご心配されている方々が増加していますが、初期の段階では子宮頚部円錐切除術といった、子宮を残す妊孕性温存治療が可能です。また初期子宮体がん、初期卵巣がんでも子宮頚がんと同様、本人ご家族の方々と充分お話を行い、妊孕性温存を図ることもあります。

 当院では、北米型救急医療体制をとり、軽症・重症患者を問わず24時間体制で受け入れています。夜間でも緊急の場合には受診してください。当科には現在8名の産婦人科常勤医が勤務しています。内3名が女性医師で、女性医師による診察を御希望の患者さんの診療に当たり好評を得ております。

単孔式腹腔鏡下手術の導入

通常の腹腔鏡手術は、腹部に数カ所の進入孔を設ける多孔式で行います。

これに対し単孔式手術では、臍1カ所のみを進入孔として用い手術を行います。切開が臍に重なりますので、傷が目立ちにくく、開腹手術、多孔式腹腔鏡手術と比べて、美容的に優れた方法といえます。他方、単孔式手術では、手術のための内視鏡、鉗子挿入を臍部1カ所より全て行う必要があり、技術的難易度が高まります。当院では2014年4月より、卵巣腫瘍、卵管妊娠等、技術的に比較的簡単なケースに単孔式腹腔鏡手術を導入しました。

腹壁の切開痕を気にされる患者さんには大変好評です。

腹腔鏡下子宮全摘術の導入

子宮筋腫、子宮腺筋症などで子宮摘出が行われる際、子宮の摘出方法として、開腹、腟式、腹腔鏡下の3つの方法があります。

開腹手術では、腹部を縦または横に切開し直視下で手術をするため、安全迅速に手術を完遂することが出来ますが、他の方法に比べ、術後疼痛はやや強かったり、入院期間が長くなったりします。腹部の切開痕が気になる方もいらっしゃるでしょう。

腟式手術では、お腹を切開せずに、腟から子宮を摘出します。腹壁に切開創が生じないため、術後疼痛は少なく、美容的にも優れていますが、子宮が大きすぎたり、腹腔内に癒着があったりすると腟からの子宮摘出が困難であり、適応となる症例には限界があります。

腹腔鏡下子宮全摘術では、お腹に数カ所5~10mmの切開窓を設け、内視鏡カメラ、鉗子を挿入してお腹の中の手術を行い、最終的に腟から子宮を摘出します。開腹手術と腟式手術の欠点を相当程度減じた手術といえます。開腹に比較して、腹壁の創は小さく、そのため術後疼痛は少なく、退院が早くなります。腟式と比較して、子宮の周囲を精緻に観察でき、癒着があってもカメラで見ながら安全に剥離することが出来ますし、大きめの子宮の摘出にもある程度対応できます。子宮と同時に卵巣を摘出する場合、腟式では卵巣動静脈に鉗子が届かず手術の難易度が格段に増しますが、腹腔鏡なら安全に施行できます。

当院には開腹手術はもとより、腟式、腹腔鏡下手術のスペシャリストが居りますので、患者さんが納得できる最も適切な方法で子宮摘出を行うことができます。

腟式卵巣嚢腫核出術の導入 – Ovarian Cystectomy with a Vaginal Approach –

卵巣嚢腫の多くは、お腹の中では腟に隣接した直腸子宮窩に位置しており、腟からのアプローチによる摘出手術が可能です。当院では2014年4月より腟式卵巣嚢腫核出術を開始しました。当科の田中医師は前任地の金沢大学にて当該手術を120例施行しており、当院でも患者さんの希望があり腟式手術が可能な症例では手術を行います。遠方の患者さんで当手術を希望する方は、当院産婦人科に電話でコンサルト下さい。

The vagina is a unique organ, directly abutting the peritoneal cavity, but showing no visible scars after incision of the vaginal wall. Since 2003, we have performed the ovarian cystectomy with a vaginal approach for 120 patients. All cystectomies were completed without conversion to laparotomy. Laparoscopy was required to complete the cystectomy in 3 % of cases. No major intraoperative complications, including rectal injury, were encountered. An anonymous questionnaire was sent to 73 patients with the mean age of 31.9 years who had undergone vaginal ovarian cystectomy more than 6 months earlier. This questionnaire included questions about fertility, dyspareunia and satisfaction after surgery and 60% of patients returned completed questionnaires. The pregnancy rate among women younger than age 30 years was 60 % and nobody developed permanent dyspareunia. The average patient satisfaction score was 4.12 (5 point scale). The transvaginal ovarian surgery can be an alternative to the laparoscopic surgery for the patients who desire the minimally invasive treatment. If you desire this surgery, contact us with an e-mail.
mail address: danngo8160892@icloud.com

Reference

  1. Tanaka M, Sagawa T, Hashimoto M, et al. Ultrasound-guided culdotomy for vaginal ovarian cystectomy using a renal balloon dilator catheter. Ultrasound Obstet Gynecol 31:342–345, 2008.
  2. Tanaka M, Sagawa T, Hashimoto M, et al. The Culdotomy Two U procedure for vaginal ovarian cystectomy. Surg Innov 18:114–118, 2011.
  3. Tanaka M, Sagawa T, Hashimoto M, et al. The Culdotomy FourS Two U procedure for transvaginal access to the peritoneal cavity. Endoscopy 41:472–474, 2009.
  4. Tanaka M, Sagawa T, Mizumoto Y, et al. Use of laparoscopic support to avoid laparotomy in vaginal ovarian cystectomy. J Minim Invasive Gynecol. 15:350-354, 2008.
  5. Tanaka M, Sagawa T, Yamazaki R, et al. An alternative system for transvaginal removal of dermoid cyst and a comparative study with laparoscopy. Surg Innov 19:37–44, 2011.
  6. Tanaka M, Sagawa T, Yamazaki R, et al. Evaluation of transvaginal peritoneal surgery in young female patients. Surg Endosc. 27:2619-262

2015年5月1日より、腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術の施設認定受ける。

2014年4月から、子宮体癌に対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術が、保険診療で認められました。日本では婦人科悪性腫瘍で腹腔鏡下手術が認められたのは今回が初めてです。大きくお腹を開けずとも、開腹手術と同様の治療効果が確認されており、患者さんにとって大きな福音と言えるでしょう。

しかしこの手術は、全ての産婦人科施設で受けられる訳ではありません。手術を完遂できる技術と経験をもつ医師チームによって治療が安全に行われるようにするため、厳格な審査が行われ、施設認定がなされています。

これまで福井県では当手術の認定を受けた施設はありませんでしたが、福井県立病院産婦人科は先陣を切って2015年5月施設認定を受けることが出来ました。福井の子宮がん治療にとって大きな進歩といえるでしょう。

診療実績

平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年
子宮頸癌 29 45 23 33 31 41 35 39
子宮体癌 8 21 16 16 20 19 20 13
卵巣癌 11 18 21 14 17 18 15 15
48 84 60 63 68 78 70 67

婦人科癌取扱件数

平成18年 平成19年 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年
腹腔鏡手術件数 7 8 13 13 30 30 57

腹腔鏡手術件数

対象疾患名

婦人科対象疾患

バルトリン腺嚢胞・膿瘍、ベーチェット病、外陰ヘルペス、尖形コンジローム、外陰癌、膣欠損症、膣中隔、膣癌、子宮奇形、子宮頚癌、子宮体癌、子宮肉腫、子宮筋腫、子宮内膜症、絨毛性疾患、卵管癌、 子宮外妊娠(異所性妊娠)、卵巣良性腫瘍、卵巣悪性腫瘍、卵巣出血、卵巣機能不全、骨盤腹膜炎、無月経を始めとした月経異常、高プロラクチン血症、月経前緊張症、更年期障害、淋病、クラミジア感染をはじめとした性行為感染症、不妊症、不育症等。

産科対象疾患

妊娠悪阻、切迫流早産、流産、早産、子宮内胎児死亡、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離、前置胎盤、多胎妊娠、血液型不適合妊娠、各種胎児奇形、子宮筋腫、子宮頚癌など婦人科疾患合併妊娠、高血圧・糖尿病など内科系疾患合併妊娠、虫垂炎など外科系疾患合併妊娠、微弱陣痛、後方後頭位などの回旋異常 骨盤位などの胎位異常、前期破水、弛緩出血、産道裂傷、DICなどの産科ショック、HELLP症候群、子宮復古不全、乳腺炎、マタニティーブルース等。

医師紹介

外来担当医師表

施設認定

日本産科婦人科学会専門医制度専攻医指導施設
日本周産期・新生児医学会周産期専門医制度(母体、胎児専門医)基幹研修施設
日本婦人科腫瘍学会専門医制度指定修練施設
日本母体保護法指定施設