診療科・医療技術部門・センター Department

精神科

有床総合病院精神科ならではの多職種協働チーム医療

救命救急センターや身体各診療科を併設した総合病院精神科の強み・安心・特性を活かし、心身両面からの高度急性期医療および多職種協働チーム医療を実践しています。

紹介・特色

精神疾患は多様化・5大疾病に指定、広く地域へ展開

今や精神疾患は癌などと並ぶ5大疾病に指定され、厚労省も精神病床の機能分化、早期退院・社会復帰や地域との連携強化などを求めています。近年、救命救急センター患者の約10%は精神科関連といわれ、身体と精神の傷病を併せ持つ緊急・重症な身体合併症の患者さんも増加しています。当こころの医療センターのような救命救急センター併設の有床総合病院精神科は全国的にもほとんどなく、その重要性は高まっています。

総合病院精神科の役割が注目

つい最近まで全国的に総合病院の精神科病床は、削減や閉鎖の一途をたどっていました。医療経済的評価の低さによる採算性の問題や、多忙化など労働環境の悪化に伴う精神科勤務医の減少などがその要因です。このような危機的状況に対して、ここ10年来、総合病院精神科の高度急性期医療を評価する医療政策上や診療報酬上の改定が相次ぎ、総合病院精神科の役割の重大さがクローズアップされています。

精神医療変革の潮流を見据えた再編

現代の複雑なストレス・高齢化社会において、精神疾患の病態はますます多様化し拡がり、がんなどと並ぶ5大疾病に指定されています。近年、救命救急センター患者の10%程度は自殺企図やうつ病・認知症など精神科関連といわれ、身体と精神の両方の傷病を併せ持つ緊急・重症な患者も多く、その対策は喫緊の課題です。これら精神医療変革の潮流を見据えて、2018年に組織再編し(4病棟198床)、全国10番目中部地方初の精神科救急合併症病棟を新設しました。既存の精神科救急病棟と合わせた2つの高機能病棟は全国2番目という先駆的な取り組みでした。この2018年の前回再編後、当センター内外の緊密な医療連携やネットワークの輪がさらに拡がり、地域からの多岐にわたるニーズ増大に応えて質の高い急性期医療を展開するには限界が生じていました。これらの現状を踏まえ、今回2024年4月に東2病棟改修(個室化で52床→40床へ削減)して全国初2つ目の精神科救急合併症病棟開設・高機能重点化4病棟体制(図:重点課題として、①精神科救急・身体合併症医療、②認知機能低下した高齢者(認知症、うつ病等)の鑑別診断・治療導入、③思春期こころのユニット病床開設、④ハイリスク飲酒~アルコール依存症患者の身体科と連携した心身両面からの治療、⑤クロザピン・修正型電気痙攣療法を駆使した重度難治性への専門的治療、⑥救命救急センター搬送の自殺未遂者ケア、⑦不安定な退院早期における訪問支援やデイケアなど地域包括ケアシステムの強化などを掲げて)へと再編しました。稀少な救命救急センター併設の有床総合病院精神科の特性を活かした県内精神医療の連携拠点としての機能強化、急性期中心の地域包括的な多職種チーム医療の充実および患者・家族が安心して生活できる福井県の実現に向けての一環した取り組みです。早期退院・地域移行を原則とする高機能重点化4病棟、および退院後まだ不安定な患者を地域で支える訪問支援体制(訪問看護師の専従8名体制など)やデイケア・リハビリなど駆使して、地域包括的なフルスペック「総合病院精神科」を目指して、入院と外来・地域をつなぐ個別化した多職種チーム医療(包括的ケースマネジメントに基づく)を今後もさらに推進していきます。当センターでは各職種・各部署間で情報共有シートやクライシスプランをフル活用して、急性期入院治療から退院後の地域生活を見据えた切れ目のない支援体制でつなぐ情報共有シートを多職種協働で実践しています。

多職種協働の高度急性期チーム医療を推進

脳・こころと身体をつなぐ
コミュニティ医療の連携拠点「総合病院精神科」として

地域との緊密な連携の中、多職種協働の高度急性期チーム医療を推進

図のごとく、当センターは全国的にも稀少な救命救急センター併設の有床総合病院精神科として、疾病性の高いハード救急や身体合併症など、緊急・重症患者を最優先に心身両面からの高度急性期チーム医療を推進しています。高齢化ストレス社会を反映して、総合病院精神科以外では対応困難な心身両面からの対応を要する精神科救急および身体合併症を有する症例が増加し、総合病院精神科のニーズが高まっています。円滑なベッドコントロール下でその役割を十分発揮するには、重症な急性期の治療は当院に紹介・治療を行い、急性期を過ぎた治療は紹介元にバトンタッチして担って頂くなど、地域包括的な相互連携に基づくシームレスな診療体制が必要となります。

各部門紹介

外来部門

精神科外来は本棟2階北西側に、心身医療科外来は本棟1階南側にあります。外来部門では、精神科一般外来、専門外来(アルコール、思春期、認知症、クロザピン等)、デイケア、作業療法、訪問支援、救命救急センターや身体科病棟への往診(リエゾン)などを実施しています。

以前は一日平均200名を超える患者さんが外来を受診され、待ち時間が長いと不評でした。このため、紹介外来予約制を導入し、患者さんの病状や経過によっては、通院の利便性の良い他の医療機関を紹介しました。また一般外来診療を原則午前中として、午後は専門外来および救急・急性期や重症の患者さんなどを中心とした病棟業務に重点を置く体制としました。その結果、2023年度の外来患者数は一日約100数十名となり、一人当たりの診療時間を確保する効果も生んでいます。外来機能の充実のため、今後も地域医療連携の流れを着実に推進していきたいと考えています。

入院病棟部門

ゆったりとくつろいだ雰囲気の病棟デイルーム

こころの医療センターの入院病棟は、静かな環境とするため、本棟西側と渡り廊下で接続、隣り合って配置されており、2つの精神科救急合併症病棟、精神科救急病棟、重度難治性病棟、身体合併症ユニット、児童思春期ユニット、アルコール依存症治療プログラム、退院前多職種訪問支援など、機能分化した4病棟・各種ユニットや専門治療プログラムおよび地域包括的ケアシステムを備えています。

現代のストレス・高齢化社会において、救命救急センター患者の10%程度は自殺企図やうつ病・認知症などの精神科関連と言われ、福井県では精神科救急情報センターを中心に、夜間・休日の精神科救急医療当番病院システムが整備されています。福井県立病院は、県内唯一の救命救急センター併設総合病院であるという特性上、県内全域から身体合併症を含む緊急・重症な精神疾患の方が集中的に紹介・搬送されてきます。これらに対応すべく、精神科急性期医療を多職種協働の手厚いチーム医療体制で行う精神科救急病棟(東3:2007年~)や精神科救急合併症病棟(1つ目の東4:2018年~、2つ目の東2:2024年~)を開設し、これらを支える重度・難治性病棟(西3)を強化しました。患者さんが速やかに病状回復し早期の社会復帰が図られるよう、医師・看護師・精神保健福祉士・心理士・作業療法士・理学療法士・薬剤師・栄養士ら多職種が緊密に連携して治療にあたっています。

当科の特色として、「心身両面からの全人的な医療」を実践していることが挙げられます。総合病院には、内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科などいろいろな診療科があり、種々の検査や診察・治療を受けることが可能です。心の病気は、心だけでなく身体にも様々な症状が出ることがあります。また、逆に身体の病気に心の症状を合併することも高い頻度で認められます。他の身体科との緊密な連携によって、より広くより柔軟に、心身両面の病態に対応することが可能です。このような総合病院の特性を活かして、心身両面からの重症な病態を併せ持つ患者さんのための精神科救急合併症病棟を前述のごとく2病棟体制(2024年4月~)へと強化して、地域の喫緊・多様なニーズに応えるべくフル稼働しています。

精神科デイケア

精神科デイケア:多目的スペース

精神科リハビリテーションと社会復帰への支援

対人交流や集団活動などを通じて、より豊かな社会生活を目指していくため、個人の病状や目的に応じたリハビリプログラムを多職種チームスタッフと一緒に実践していきます。医師・看護師・心理士・作業療法士といった多職種チームで運用しています。

このような方にお勧めします

  • 退院後、自宅での生活が不安定
  • 日常生活のリズムを整えたい
  • 趣味や楽しみを見つけて、生活の質を高めたい
  • 病気や薬について、学びたい
  • よりよい人間関係や仲間づくりをしたい
  • 夢や生きがいを持って、かなえたい

作業医療科・疾患別リハビリ(作業療法・理学療法など)

作業医療科:運動・リハビリ教室

入院患者さんおよび通院患者さんの生活に視点を置き、その人らしさを大切にしながら健康を回復し主体的な生活が送れるよう、日常生活に必要なスキルや能力の獲得や地域で生活していくための心身両面からの支援を行っています。

支援および働きかけ

  • 症状安定化に向けての支援
  • 基本的な日常生活への援助
  • 就労・職場復帰への援助
  • 対人関係・社会性の改善
  • 趣味・余暇活動の育成
  • レクリエーション

精神科訪問支援

外来通院患者さんが安心して治療を継続しながら快適な生活を送ることが出来るよう、看護師や精神保健福祉士などの専門職がご自宅に伺い様々な総合的生活支援をする制度です。利用を希望される方は、主治医または病棟・外来看護師、精神保健福祉士にご相談下さい。

このような方にお勧めします

  • 再入院を繰り返している方
  • 治療を続けることが途切れがちになっている方
  • 病院と付き合いながら地域での生活を持続しようとしている方
  • 閉じこもりがちで日常生活や人間関係が上手く機能していない方
  • 家族として、どんな対応をしたらよいか分からない方
  • 単身生活で回りに相談できる人がいない方

時間外診療

時間外診療(夜間・休日)は、福井県では精神科救急医療の当番病院体制が整備されています(治療を受けている場合にはかかりつけ医療機関での対応が優先)。夜間・休日の緊急な場合は、福井県精神科救急情報センター(電話:0776-58-2750)にご相談下さい。

当こころの医療センターにおける重点医療や主要な専門治療プログラムの紹介

変わるアルコール依存症治療
―総合病院での身体科と連携した飲酒量低減―

総合病院の特性を活かした心身両面から切れ目のない依存症治療

全国的にアルコール依存症者は約110万人と見積もられている中、専門医療機関につながっているのはわずか5万人ほどの重症患者が主体と推定されています。当こころの医療センターのアルコール依存症治療プログラムもこれまで(統合前の単科精神科病院の時代からひき続き)、顕著な精神症状や離脱症状などを伴うより重症なアルコール依存症者(飲酒者全体から見れば氷山の一角である)に特化した取り組みが中心でした。今般、最近10年間にアルコール関連身体疾患で当院身体科に入院した1723人について調査して、当院への再入院に限っても再入院率47.6%、また死亡が判明した症例に限っても死亡率が23.2%といずれも高値で予後が極めて不良であることがわかりました。アルコール関連の身体疾患がいったん回復・退院しても、再飲酒・再入院を繰り返してついには致死的な病態へと負のスパイラルを辿り、地域へ橋渡しする段階で依存症そのものに対する治療や支援が必要不可欠であることが示唆されます。

コロナ禍のストレス社会を経て、自宅に孤立化したエンドレスな飲酒が常習化し、アルコール依存症は誰にでも起こりうる深刻な社会問題として大きく取りだたされています。県内初の依存症治療拠点化を見据えて、当院搬送・受診・入院のハイリスク飲酒者および軽症依存症者などに対象を拡げて手厚い支援を実践し、総合病院の特性を活かした心身両面から切れ目のない依存症治療を推進しています。すなわち、総合病院に搬送・集約されるより多くの患者をターゲットに、もっと広くハイリスク飲酒者~軽症依存症者に支援の輪を広げ・退院と再飲酒を繰り返す死への負の連鎖を断ち切って患者の命を守るべく、身体科と手を携えて身体的治療と依存症そのものに対する脳・こころの治療を連関させて進めていく必要があります。

「ハームリダクション」の観点を治療に導入。

治療の選択肢として、短期入院やデイケアでの“依存症回復プログラム”

日本国内でのアルコール依存症患者は110万人、アルコール依存症予備軍に該当する1日あたりアルコール60g以上飲酒する多量飲酒者は980万人にのぼると推計されます(2013年厚生労働省研究班)。県内でもアルコール依存症や多量飲酒に伴う健康問題で、多くの患者さんが苦しんでおられます。

当こころの医療センターでは、福井県立精神病院時代の1986年より入院でのアルコール依存症リハビリテーションプログラム(ARP)を実施するなど、アルコール依存症の治療に取り組んで参りました。近年では、より多くの患者さんに治療に取り組んでいただけるよう、「3か月入院するのは難しい」とためらう患者さんには、より短期間1カ月程度の入院プログラムを提案したり通院で精神科デイケアの依存症回復プログラムに参加していただくなど、治療の選択肢を広げています。

節酒薬ナルメフェンの投与も開始、飲酒量の低減へ

AUDITアルコール使用障害同定テスト(簡易版) WHOが作成したスクリーニングテストでの最初の3項目で男性は合計5点以上、女性は3点以上で「危険な飲酒」または「アルコール依存症の疑い」と評価します

これまでは、アルコール依存症の治療といえば「断酒あるのみ」だったのですが、最近は「最終目標は断酒だが、今すぐ酒を止めることはできなくても飲酒量を減らすことから始めて、飲酒による害をできるだけ減らそう」というハームリダクションの概念が取り入れられています。

当センターでは、個々の患者さんが目指す飲酒行動の変容に向けてサポートしています。飲酒量の低減を目的としたナルメフェンの投与も開始しています。

福井県でもアルコール健康障害対策基本法に基づく基本計画が策定されています。地域の医療機関の先生方においても、目の前の患者さんをアルコール健康障害から救って頂くため、生活習慣病のため治療中で、飲酒習慣を有する患者さんには簡易版AUDIT(アルコール使用障害同定テスト)を実施していただき、男性で5点以上、女性で3点以上の場合は、患者さんに精神科受診をお勧めくださるなどご支援のほどお願い致します。

大規模・高機能なデイケア運用

マインドフルネスや各種心理教育など専門プログラムを充実。

退院早期の地域支援を強化、心身両面から「リカバリー」をサポート

精神科の治療では、薬物療法と心理社会的アプローチを併用していくことが有効です。

こころの医療センターデイケアでは精神疾患で治療を受けている方の地域生活を支えるために、再発予防・QOLの改善・社会参加を目的とし、多彩な精神科リハビリテーション(心理社会的治療)を実施しています。

特徴的なプログラム・支援としては疾患(統合失調症・気分障害・アルコール依存症)ごとの「心理教育」や「社会資源・IMR(疾病管理とリカバリー)教室」、担当者と短期・長期目標を設定しフォローしていく「面接相談」などがあります。ベースには”障害のある方が、各自で自分が求める生き方を主体的に追及する“という「リカバリー」の理念があり、患者さんの自発的な回復の力を促進し、自分らしい夢や目標を叶えていくことを大切にしています。

「マインドフルネス」を取り入れた心身両面からのケア

当センターではストレスの低減や症状の緩和などを図るため、ストレスに対処する心のエクササイズとして話題の「マインドフルネス」を活動プログラムに取り入れています。ヨガや心理教育、瞑想などのワークを通して、「今、この瞬間に心を向け、自分の体験に気づいて自動思考を止める」ことで、いつもの思考パターンから脱却し、新鮮な気持ちで考え、行動できるように練習します。

このような「マインドフル」な状態で芸術活動、調理、スポーツ、野外活動などのデイケア活動に参加することで、新しい発見や感動が得られ、より「マインドフル」な状態になるという相乗効果が期待されます。

クリニック等に通院治療されている患者さんでも、当院デイケアを利用できます。マインドフルネスを取り入れたプログラムにご関心をお持ちいただけましたらお気軽にお問い合わせください。

有床総合病院精神科の特性を活かした地域包括的な高齢者医療(認知症、うつ病など)
心身両面からの認知症治療拠点化と新規抗認知症薬:レカネマブの治療導入

「2025年問題」さらに「2040年問題」(人口減少と少子高齢化など)に直面する日本において、増え続ける認知症への対応が社会問題となっています。福井県は全国平均よりも3年程度高齢化が進んでおり、認知症対策が急務です。

「認知症疾患センター」とは都道府県が設置する地域の保健医療福祉水準の向上を図るための専門医療機関であり、認知症疾患に関する鑑別診断とその初期対応、BPSDと身体合併症への急性期対応、医療相談や研修などを実施します。2017年7月に一部改訂された新オレンジプランでは、基幹型・地域型・連携型の各類型の認知症疾患医療センターが効果的・効率的に連携できるような体制作りが求められ推進されています。2023年10月現在、全国では505箇所の認知症疾患医療センター(類型別では基幹型:21施設、地域型:386施設、連携型:98施設)が指定されています。全国では東京都が52施設と最多、福井県が2施設(いずれも地域型)と最小で、高齢者人口6万人当たりに換算しても福井県は0.51と全国ワースト5の低い水準にあります。県内に基幹型センター(総合病院への設置が必須)は皆無で認知症診療レベルのさらなる向上のため基幹型の整備は喫緊の課題と考えられます。基幹型センターには身体合併症やBPSDに対する救急急性期医療機関としての機能、地域の特性に応じた認知症支援体制づくりの拠点機能、認知症鑑別診断、専門医療相談、認知症医療・ケアを担う多職種の人材育成、地域への啓発活動に至るまで数多くの役割が求められています。これらのニーズをクリアするためには、急性期BPSDに対応できる精神科病棟の内に身体疾患に対応できる設備の整った病床が併設されている総合病院(当院のごとく)への設置が理想的です。

当こころの医療センターは全国的にも稀少な救命救急センター併設の有床総合病院精神科として、院内各診療科や救急科などと緊密に連携し、先進的な画像検査(高性能MRI/アミロイドPETなど)や心身両面からの総合的な医療を迅速に提供することができます。新規抗認知症薬:レカネマブの導入など認知症新時代の幕開けに際し、県内初の基幹型認知症疾患医療センターの開設も視野に、当センターで早期鑑別診断・治療導入や身体合併症・BPSD等に対する急性期医療を行い、かかりつけ医や地域保健福祉機関と緊密に連携して地域包括的な認知症支援体制の強化を図ることは、今後総合病院が担う重点課題の一つであると考えられます。

総合病院ならではの認知症や老年期うつ病の早期鑑別診断・検査入院・治療導入など

認知症と老年期うつ病の経過や臨床特徴の相違点

高齢化が加速し、認知症患者が急増する中、総合病院では高度な画像機器や検査体制を駆使して、正確な診断に基づく疾患ごとの個別的な治療やケアが可能です。

老年期は、老化や病態など生物学的要因に加えて心理社会的要因からうつ状態を呈しやすくなります。老年期うつ病では悲哀感が目立たず、認知機能の低下がある場合は気づかずに進行することが多くあります。高齢者では認知症とうつ病の相違点や重なりを常に念頭に置き、早期発見・早期治療が重要です。

また、認知症との鑑別など確定診断のための検査入院も有用です。短期間で集中的に検査を実施でき、治療の導入や退院後の生活支援や社会資源介入のきっかけとなるなど、その意義は大きいと考えられます。

新たに「思春期こころのユニット病床」の開設

今般まさに「子どものこころ」の問題が着目され、児童思春期の医療体制充実やそのための診療ネットワーク整備が全国的に喫緊の課題となっています。しかしながら、福井県には児童思春期こころの専門病棟がなく、特に救急急性期の重症患者受け入れ入院体制の整備が不十分で必要な医療的介入が遅れてしまう懸念があります。このような窮状を踏まえて、当センターでは心身両面からの高度急性期医療やハード救急などに重点化した思春期こころの治療ユニット10床(新東2救急・合併症病棟内に)を2024年4月に開設しました。対象となる疾患・病態として、子どもの自傷・自殺企図症例や重度摂食障害および個室管理を必要とする救急急性期の重症な入院適応症例などが挙げられます。

クロザピン及び修正型電気痙攣療法を駆使した重度難治性患者の治療

国の調査では統合失調症やうつ病入院患者の半数近くは入院が長期化しやすい重度難治性・治療抵抗性と考えられ、クロザピンや修正型電気痙攣療法など実効性のある専門的治療により地域生活へ移行することが施策として社会的にも求められています。しかし、いずれの治療法も血液内科医や麻酔科医との協働など他の身体診療科との連携が欠かせないため、導入・開始できる医療機関は実質的に総合病院に限られています。例えば国内外の調査から治療抵抗性統合失調症へのクロザピンの治療効果が高いことは明らかであり、厚生労働省は2025年までにクロザピンの処方率を治療抵抗性統合失調症患者の25~30%にまで普及させることを目指しています。しかし現状では、これまでクロザピン治療を受けたのは治療抵抗性統合失調症者全体の10%未満に留まっています。クロザピン導入時(治療開始後~少なくとも18週まで)の入院治療を拠点病院が担当し、退院後の維持期の治療を連携病院が機能分化して担当する仕組みが望ましく、当センターをこのような県内拠点病院としてさらに強化することができれば、クロザピン治療の県内全域への普及に繋がると考えられます。

診療実績

2024年度、こころの医療センタ-診療実績

一日平均入院患者 約140人
年間新入院患者 761人
平均在院日数 約68日
一日平均外来患者数 約120人

精神科での主な治療法

  • 薬物療法(標準的なガイドラインを踏まえた薬物選択)
  • 治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン療法
  • 認知行動療法
  • SST、心理教育・疾患教育
  • アルコール依存症リハビリテーションプログラム(ARP)
  • 修正型電気けいれん療法
  • デイケア
  • 精神科作業療法

対象疾患名

  • 統合失調症、妄想性障害
  • 気分障害、うつ病、躁うつ病
  • 不安障害(全般性不安障害、適応障害、社交不安障害、強迫性障害など)
  • 症候性・器質性精神疾患(認知症やせん妄を含む)
  • 心身ストレス関連障害・身体表現性障害
  • アルコール・薬物関連障害
  • 摂食障害
  • 児童思春期精神疾患
  • 自殺未遂者ケア
  • 精神保健福祉法の措置入院・応急入院
  • 不眠症

施設認定

  • 応急入院指定病院
  • 特定病院
  • 医療観察法指定通院医療機関
  • 日本精神神経学会精神科専門医研修施設
  • 日本老年精神医学会専門医制度認定施設
  • 日本認知症学会教育施設
  • 日本総合病院精神医学会専門医制度研修施設
  • 子どものこころ専門医研修施設群
  • 日本専門医機構(日本精神神経学会)専門医研修基幹プログラム
  • アルコール依存症治療拠点機関(準備中)