人工関節手術支援ロボット「ROSA」

ROSAとは

 ROSAとは、Robotic Surgical Assistantの略で、人工膝関節置換術や人工股関節置換術の際に執刀医のサポートを行う手術支援ロボットです。
 ROSAは、ロボットアームが付いたロボティックユニットと、さまざまな情報を表示するオプティカルユニットから構成されており、患者の骨の位置を正確に把握し、人工関節を正確に設置するためにロボットアームが手術の支援を行います。
 当院では令和4年11月に人工膝関節置換術用の「ROSA Knee(ロザ・ニー)」を導入し、令和5年5月から人工股関節置換術用の「ROSA Hip(ロザ・ヒップ)」を導入しました。いずれも福井県では初の導入施設であり、正確なナビゲーション機能でより精度の高い手術を行うことができます。

画像
左:ロボティックユニット、右:オプティカルユニット

人工膝関節置換術とは

 人工膝関節置換術とは、変形性関節症や関節リウマチなどの疾患によりすり減った関節 の表面を切除し、人工関節に置き換える手術です。人工関節は、主に金属やセラミック、ポリエチレンなどでできており、関節の痛みの原因となっている部分を取り除くため、他の治療法と比べると「痛みを取る」効果が大きいのが特徴です。

ROSA Kneeを用いた手術の特徴

 変形性膝関節症の代表的な手術である人工膝関節置換術では、適切な位置に人工関節を設置することが重要です。しかし、従来の手術では骨を削る量や角度など、医師の経験や技術、感覚に頼る部分がありました。
 ROSA Kneeを用いた手術では、手術前に患者さんの膝のX線情報をコンピューターに取り込んで3D画像を作成し、その画像をもとに骨を切る角度や量、人工関節のサイズや設置する位置などの手術プランを事前に行います。手術の際には、大腿骨と脛骨にそれぞれ2本のピンを固定して骨の位置情報を把握し、手術前に計画した情報や手術中の軟部組織の状態など、画面上に表示される数値をみながら、実際に骨を切る量や角度を最終的に決定します。その後、ロボットアームが正確な骨切り位置となるようガイドを制御してくれますので、このガイドに沿って術者が骨を切ることで正確な手術が可能となります。

人工股関節置換術とは

 人工股関節置換術とは、変形性関節症や大腿骨頭壊死症、関節リウマチなどの疾患により損傷した股関節の表面を切除し、人工関節に置き換える手術です。大腿骨側に金属製のステムとボール型ヘッドを設置し、骨盤側に軟骨の役目を果たすライナーをはめ込んだ金属製のカップを固定し組み合わせることで、滑らかな股関節の動きを再現します。

ROSA Hipを用いた手術の特徴

 変形性股関節症の代表的な手術である人工股関節置換術では、正確に人工関節を設置しないと脱臼やライナーの摩耗・破損、可動域の制限、脚長差のズレなどにつながる恐れがあり、特にカップを適切な角度で骨盤に設置することが重要となります。しかし、従来の手術では人工関節の設置角度に誤差を生じ、患者さんの満足度や予後に影響することが課題でした。
 ROSA Hipを用いた手術では、手術中のレントゲン画像を参考にしてカップの設置角度をロボットアームが1度単位でアシストし、正確な位置に固定することができます。また、術中に脚延長量や大腿骨軸から骨頭中心までの距離の変化量を1mm単位で数値化して確認できるため、患者さんごとに適切な人工関節を選択することが可能となります。

患者さんのメリット

 手術支援ロボットの活用によって手術の精度が担保されるため、術後の患者さんの満足度の向上や人工関節の長期耐用性が期待され、より少ない侵襲で患者さんの負担軽減につながることが期待されます。

保険適用について

 ROSA KneeおよびROSA Hipは医療保険の適用ならびに臨床使用が認められた医療機器として承認されています。

手術支援ロボット「ROSA」に関する記事

福井県立病院広報誌『コンパス』

○第64号(2023年3月):人工膝関節手術支援ロボット「ROSA Knee」を導入

日刊県民福井『しあわせ広場』

○2023年3月28日:ロボット支援人工膝関節置換術

地域医療連携のための病院機能情報

○令和5年7月:特集「ROSA System」