NST(栄養サポートチーム)

NSTの紹介・特色

 栄養療法はすべての患者さんに共通して必要な、基本的かつ重要な治療法のひとつです。ところが、現実には入院患者さんの1~3割程度に栄養障害があると見積もられ、そのことが治癒を遅らせて入院期間を長引かせる一因にもなっています。一方、入院時に患者さんの栄養状態を適確に判断し、栄養障害が疑われる患者さんに早期から栄養療法を行うことで治療効果が向上し、さらに感染症などの合併症を防ぐのに有効であることが明らかになっています。

 NST(栄養サポートチーム)は、そのような状況を受けて誕生したチーム医療の一つです。専門知識や技術を持った複数の職種(医師、栄養士、看護師、薬剤師、言語聴覚士、検査技師など)が、各々の専門性を活かしながら、職種間の垣根を越えたチームで患者さんの栄養管理にあたります。個々の患者さんの体格や病状に合わせた栄養治療を実施することで患者さんの栄養状態を改善し、疾患の治療効果を上げるのが目的です。

 福井県立病院では平成15年7月からNST活動を開始し(図1;NST活動フローチャート)icon_pdf、以下を活動の目標としています。

  1. 入院時の栄養障害を見逃さない
  2. 個々の患者さん毎に適切な栄養療法を行う
  3. 入院中に栄養障害を起こさない

 入院時に患者さん全員に、当院独自に作成した栄養スクリーニングS-NUST;Scored Nutritional Screening Tool(資料1)icon_pdfを行い、栄養障害が疑われる症例および熱傷、胃瘻・腸瘻患者は全例NST対象症例としています。以後入院中を通して定期的な栄養評価とNST回診を継続し、適切な栄養投与量・投与方法などを主治医に提言しています(資料2)icon_pdf

 入院時に栄養障害がないと判断された患者さんに対しては担当看護師・病棟担当の管理栄養士が個々に栄養必要量を算出し、毎週栄養評価を継続しています。必要があればNSTへ依頼し、入院中の栄養障害発生や状態悪化を見逃さないよう努めています。

NSTによる栄養サポートの対象

  1. 入院時栄養スクリーニングで中等度以上の栄養障害が疑われる場合
  2. 胃瘻・腸瘻造設状態あるいは造設予定
  3. 熱傷
  4. 入院経過中に体重減少など栄養状態の悪化が疑われる場合

NST介入実績(資料3)icon_pdf

 平成15年の発足当初は主治医からの依頼症例に限定されていたため、数名/月程度でした。平成16年の全例スクリーニング適応後、新規NST介入患者数は漸増し、栄養管理実施加算適応後さらに増加して全入院患者数の7~10%(170~250名/月)程度で推移しています。平成17年4月から令和6年3月末までの新規NST対象症例数は累計約18,100名です。

NST委員会の紹介

 内科医師を委員長に、医師、歯科口腔外科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、言語聴覚士、検査技師の委員で構成しています。

NST回診(資料4)icon_pdf

 全20病棟を3つのブロックに分け、ブロックごとに1回/週の回診を行っています。NST加算条件を満たす回診は、内科NST医師担当病棟に限定し、専任メンバー(医師1名、看護師4名、薬剤師3名、管理栄養士4名、言語聴覚士3名)で実施しています。

NST勉強会(資料5;過去5年間の実施状況)icon_pdf

 平成16年6月より開始し、現在は第2水曜日もしくは第3水曜日の17時45分より約1時間の日程で行っています。

  〈内容〉各病棟担当で問題症例の提示と病態・栄養管理方法解説
      栄養管理の基礎講義など

 院外の医療従事者の皆さんの参加も歓迎いたします。

地域連携NSTの試み

 患者さんの栄養状態維持・改善のためには、入院中の栄養管理にとどまらず、退院後の継続管理がとても大切です。

 胃瘻を新たに造設あるいは造設した状態で入院された患者さんについては、情報の共有が必要であるため、退院時にNSTから胃瘻本体および栄養投与量・投与方法についての詳細な情報を作成、提供しています(資料6;胃瘻管理情報提供書)  icon_pdf

*勉強会の詳しい日程情報は、NST事務局(県立病院内 栄養管理室 NST専従管理栄養士)までご連絡ください。

文責  NST Chairman 内科 栗山とよ子