前立腺がんの特徴
前立腺がんは男性が罹患するがんで1番多く、全国がん登録の報告では2017年に新しく前立腺がんと診断された患者数は人口10万人に対し147.9人でした。一方、死亡率は10万人当たり19.8人(2019年は20.8人)と低く、5年生存率は99.1%と高いため、適切な治療を行えば治る可能性が高いがんと考えられています。
前立腺がんの治療法
前立腺がんは、ホルモン療法である程度の期間は進行を抑えることが可能ですが、ホルモン治療だけではがんを根治することは出来ません。
このため、転移のない前立腺がんの根治(がんを完全に治すこと)を目指すには、前立腺全摘出手術や放射線治療が必要となります。陽子線治療も放射線治療の一種です。それぞれメリット・デメリットがあるので、担当医とよくご相談ください。
なお、同じ部位には放射線治療は一度しか出来ないため、小線源治療やIMRTをした後に陽子線治療を行うことはできません。
治療法による入院の要否
- 手術:手術は1日で終わりますが、入院が数日間必要です。
- 放射線治療:小線源治療は数日間の入院が必要です。X線治療を用いた強度変調放射線治療(IMRT)では通院治療が可能です。
- 粒子線治療(陽子線/炭素線):ほとんどの方が通院で治療を受けています。
前立腺がんの陽子線治療
陽子線治療の適応
- 病理学的診断が確定している前立腺がん
- 臨床的にT1~T4(膀胱頸部浸潤)N0M0
- リンパ節転移および遠隔転移がないこと
照射回数・治療期間
通常、28回、約6週間で治療を行います。
ホルモン療法の併用
ホルモン治療開始後、PSAが1以下になってから陽子線治療を行っています。目安として、中間リスクでは6か月、高リスクでは21か月となります。
治療費
前立腺がんの陽子線治療は、公的医療保険の対象となります。
陽子線治療に伴う有害事象(副作用)
治療中は頻尿や頻便、一時的な尿漏れが生じることがあります。晩期(治療後3か月以降)の副作用として、直腸炎からの出血があります。
ハイドロゲルスペーサー留置術
ハイドロゲルスペーサー留置術は、ハイドロゲルと呼ばれる液体を前立腺と直腸の間に注入し、前立腺と直腸の間隔を空けることで、直腸に照射される陽子線の量を減少させる技術です。
これにより、直腸に発生する合併症を減らし、より安全に陽子線治療を受けることができます。
また、一度に照射する陽子線の量を増やすことができるため、治療期間を短縮できる場合があります(通常28回→21回)。
※ハイドロゲルスペーサー留置術を実施する場合は入院が必要となります(おおむね2泊3日)。詳しくはお問い合わせください。
※病変の部位や進展の程度により、ハイドロゲルスペーサー留置術を実施できない場合や、治療期間の短縮ができない場合があります。