福井県立病院 病院指標

療法における病院等の広告規制について(厚生労働省)

 この病院情報(7つの指標)の公表については、平成28年度から、全国のDPC対象病院で開始されました。DPC(診断群分類)では、どんなご病気で入院し、どんな手術や処置を受けるかにより、全国共通のコードで分類しています。
次の7つの指標は、昨年度の当院の診療実績について、全国共通のルール(下記の集計条件)に沿って集計しました。
<集計条件>
・令和5年4月1日から令和6年3月31日までの退院患者さんの診療実績です。ただし、入院後24時間以内あるいは生後7日以内に死亡された患者さんや、臓器移植を受けた患者さん等については、集計に含めておりません。
・10件未満の場合は、件数ではなく「-(ハイフン)」で表示しています。

  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞の患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
患者さん用パスとは?
治療や検査の標準的な経過など、入院中の予定をスケジュール表にまとめた患者さん用の入院診療計画書です。

指標1 年齢階級別退院患者数【ファイルをダウンロード

年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 955 317 332 503 717 1181 2,198 3,690 2,418 588



令和5年度退院患者数

 当院は、三次救急医療を担う救命救急センター、県がん診療連携拠点病院として先進的ながん治療を行うがん医療センターや陽子線がん治療センター、急性期中心のこころの医療センターなど、県全域をカバーする基幹病院として高度な医療を提供しており、新生児から高齢者まで幅広い年齢層の患者さんの診療を行っています。
 特に、リスクの高い出産や低体重で生まれてくる赤ちゃんの治療を行う総合周産期母子医療センターがあるため、0歳代の患者さんが多くなっており、全体の7%以上を占めています。
 また、高齢化により、脳や心臓の血管の病気やがんの患者さん、呼吸器の患者さんが多く、60歳以上の患者さんが全体の約7割を占めています。

指標2 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)【ファイルをダウンロード


一般内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
180030xxxxxx0x その他の感染症(真菌を除く。)定義副傷病なし 76 9.83 8.61 36.84% 78.41 パス
180030xxxxxx1x その他の感染症(真菌を除く。)定義副傷病あり 47 9.85 20.04 31.91% 78.79 パス
161070xxxxx00x 薬物中毒(その他の中毒)手術・処置等2なし定義副傷病なし 26 2.35 3.62 7.69% 40.08 パス
161060xx99x0xx 詳細不明の損傷等手術なし手術・処置等2なし 19 1.79 2.86 0.00% 42.68 パス
170020xxxxxx0x 精神作用物質使用による精神及び行動の障害定義副傷病なし - - 3.05 - -
救命救急センターはER方式(北米型救急)を採用し、軽症から重症の患者さんまで診療しています。生命にかかわる重大疾患の疑いのある方を最優先して診療するために、来院された患者さんにはトリアージを行い、診療の順番を決めさせていただいています(そのため、軽症の患者さんにはお待ちいただく場合があります)。初期治療の後で入院が必要となった場合は専門科医師に連絡し入院加療を行います。精神作用物質(睡眠剤など)・薬物(アルコールなど)の過量服用時の意識障害、食物、薬物、蜂刺されなどによりアレルギー反応が激しく起こるアナフィラキシー、そして、明らかな骨折はなくても疼痛の著明な外傷などの患者さんに対しては救急医が主治医となり短期の入院加療を行うことがあります。多くの患者さんは2-3日の入院加療で退院されますが、病状の経過によってはより長く入院を要したり、あるいは、人工呼吸・血液浄化療法などの高度な治療が必要となる患者さんに対しては集中治療室(ICU)で加療します。このような重症の長期入院の患者さんには専門科医師が継続して治療を行うことになっています。


消化器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060100xx01xxxx 小腸大腸の良性疾患(良性腫瘍を含む。)内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術 377 2.08 2.61 0.00% 68.65 パス
060340xx03x00x 胆管(肝内外)結石、胆管炎限局性腹腔膿瘍手術等手術・処置等2なし定義副傷病なし 98 10.06 8.75 4.08% 75.24 パス
060020xx04xxxx 胃の悪性腫瘍 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術 86 7.24 7.61 0.00% 76.06 パス
060050xx030xxx 肝・肝内胆管の悪性腫瘍(続発性を含む。)肝悪性腫瘍ラジオ波焼灼療法(一連として)等手術・処置等1なし 67 10.24 7.38 1.49% 74.78 パス
06007xxx9906xx 膵臓、脾臓の腫瘍手術なし手術・処置等1なし手術・処置等26あり 49 8.39 5.15 0.00% 67.78

 当科で令和5年度に最も多く施行された治療は内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術です。最近では大腸内視鏡検査の普及に伴い、大腸ポリープや大腸腫瘍性病変が多く発見されるようになったことに加え、食生活の欧米化に伴い大腸腫瘍性疾患の患者さんが増加しております。これらの病変に対する治療としての内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術を受ける患者さんが多くなっています。早期発見、早期治療により進行大腸癌の予防ができることから、今後も増加していく治療であると思われます。
 2番目に多い治療は胆管内の結石や胆管腫瘍が胆管を閉塞することで起こる胆管炎や黄疸の治療です。胆管炎や黄疸の原因が良性疾患であっても致命的な状態に陥ることがあるため、ほとんどの患者さんに緊急入院による治療を受けて頂いています。内視鏡的胆道ステント留置術などの内視鏡手術を緊急で受ける患者さんも少なくありません。術後も治療が必要な胆管炎や黄疸ですが、患者さんに早く元気になって頂き、入院期間が全国平均よりも短くなるように努力しています。
 3番目に多く行われた治療は胃腫瘍性病変の治療です。内視鏡的早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術という治療で、粘膜の下にある粘膜下層を電気メスで剥離する方法です。外科手術に比べて生活への影響が少ないことや、高齢の方が増加していることもあり、この治療を受ける患者さんのニーズは今後も続いていくものと思われます。当院での内視鏡治療技術は全体的に安定しており、入院期間に関しても短縮できております。
 4番目に多い患者さんは、肝臓にできた腫瘍性病変の治療を受ける患者さんです。肝臓に出来る腫瘍は自覚症状に乏しいことから進行した状態で発見される患者さんがいます。また、転移性肝腫瘍では局所療法がすでに困難になっていることもあります。できれば外科手術や局所療法のラジオ波焼灼術、腫瘍血管塞栓術ができる状態で発見し、肝臓の機能を温存しながら、より根治度の高い治療を実施できるように早期発見・早期治療介入に努めていきたいと思います。
 5番目に多い患者さんは、膵臓癌の患者さんです。これまでと比べて化学療法や陽子線治療が進歩して生存率が改善してきており、化学療法を導入して複数年生活の質を保ちながら生活できるようになりました。どうしても化学療法による副作用で入院期間が長くなってしまう傾向がありますが、早期に症状を改善し、入院期間が短縮できるようにこれからは努力していきたいと思います。


呼吸器内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040040xx99040x 肺がんの薬物療法 102 7.35 8.33 0.00% 70.66 パス
040040xx99200x  肺がんの検査 93 2.20 2.98 0.00% 73.26
040110xxxxx0xx 間質性肺炎の診断・治療 80 15.55 18.65 11.39% 74.76
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎の治療 58 19.79 20.60 38.60% 82.71 パス
040040xx9900xx 肺がんの対症療法 50 24.86 13.59 8.00% 75.32
 呼吸器内科では肺がん検査と薬物治療の患者さんが最も多くなっています。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新しい抗がん剤治療を積極的に使用しています。さらに、陽子線治療等の最新の放射線治療装置を使っての放射線療法も行っており、幅広い治療法を選択できることが当科の強みです。そのためには肺がんの診断を迅速に正確に行うことが最重要と考え、主な肺がん検査の気管支鏡検査を1泊2日入院で安全に行っています。
 第3位は、難病である間質性肺炎の診療となっていますが、令和3年より凍結生検・クライオバイオプシーを導入し、より正確な診断を行えるようになっています。


循環器内科 脳心臓血管センター

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050050xx0200xx 狭心症、慢性虚血性心疾患経皮的冠動脈形成術等手術・処置等1なし、1,2あり手術・処置等2なし 155 4.49 4.26 0.65% 68.61 パス
110280xx03x0xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全内シャント血栓除去術等手術・処置等2なし 147 1.75 4.51 0.68% 73.50 パス
050130xx9900x0 心不全手術なし手術・処置等1なし手術・処置等2なし他の病院・診療所の病棟からの転院以外 91 17.49 17.38 18.68% 83.81 パス
050070xx01x0xx 頻脈性不整脈経皮的カテーテル心筋焼灼術手術・処置等2なし 80 4.31 4.57 0.00% 68.79 パス
050050xx9910x0 狭心症、慢性虚血性心疾患手術なし手術・処置等11あり手術・処置等2なし他の病院・診療所の病棟からの転院以外 75 3.15 3.05 0.00% 69.23
慢性虚血性心疾患に対するPCI(経皮的冠動脈形成術)が多くを占め、急性心筋梗塞に対する緊急PCIも多くの症例に対して治療しています。近年透析シャントに対するVAIVT(バスキュラーアクセス拡張術)、末梢動脈疾患に対するEVT(末梢血管形成術)、不整脈に対するCA(カテーテルアブレーション、心筋焼灼術)が着実に増加しています。心不全入院症例は高齢化、疾病構造の変化により増加傾向で、高齢者が多いことから在院日数が長くなっています。



腎臓・膠原病内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110280xx9900xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全手術なし手術・処置等1なし手術・処置等2なし 43 13.53 11.49 9.30% 64.35 パス
110280xx9901xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全手術なし手術・処置等1なし手術・処置等21あり 27 13.44 13.81 3.70% 72.04
070560xx99x00x 重篤な臓器病変を伴う全身性自己免疫疾患手術なし手術・処置等2なし定義副傷病なし 23 18.48 14.23 0.00% 67.09
110280xx03x0xx 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全内シャント血栓除去術等手術・処置等2なし 21 14.00 4.51 28.57% 73.19 パス
110280xx02x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全動脈形成術、吻合術 その他の動脈等手術・処置等2なし定義副傷病なし 18 23.00 7.57 11.11% 71.56 パス

最も多く診療している疾患は、慢性腎炎症候群、慢性間質性腎炎、慢性腎不全です。この中には、慢性腎不全が急速に進行しているため精査や治療を行う患者さん、脱水症などの合併症で入院する患者さん、またIgA腎症のステロイドパルス療法を行う患者さんなど、非常に幅広い腎臓病の患者さんが含まれています。腎臓病は自覚症状が少ないことが多いですが、治療によって腎炎の寛解(血尿や蛋白尿の消失)や腎機能の改善、腎不全の進行抑制を目指しています。
次に多いのは、慢性腎不全、維持透析患者さんが感染症、心不全などの合併症で入院し、治療を必要とした症例です。
3番目に多いのは、全身性エリテマトーデスや成人発症スチル病、リウマチ性多発筋痛症などの膠原病やリウマチ性疾患により、診断や治療のために入院する患者さんです。
4番目は、慢性腎不全、維持透析患者さんで、内シャントが使用できなくなった場合にカテーテルを用いた血栓除去術などの手術を必要とする症例です。透析患者さんの高齢化に伴い、内シャントの問題が増えており、緊急入院が多くなっています。
5番目は慢性腎不全、維持透析中の患者さんで、動脈形成術や吻合術といった内シャントの手術を要する症例です。


内分泌・代謝内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
10007xxxxxx1xx 2型糖尿病(糖尿病性ケトアシドーシスを除く。)手術・処置等21あり 88 12.20 13.99 4.55% 68.42 パス
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症手術なし 21 11.10 13.52 14.29% 79.95
100040xxxxx00x 糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡手術・処置等2なし定義副傷病なし 16 12.00 13.15 0.00% 58.88
040081xx99x0xx 誤嚥性肺炎手術なし手術・処置等2なし - - 20.30 - - パス
100393xx99xxxx その他の体液・電解質・酸塩基平衡障害手術なし - - 10.25 - -

最も多い入院患者さんは、血糖値を良くするために入院された2型糖尿病の患者さんです。入院して血糖値をコントロールしながら合併症の検査や糖尿病に対する学習をして知識を得ていただきます。血糖コントロールを目指す治療として、食事・運動・薬物療法があります。薬物療法は、まずはインスリンによる治療が多いです。インスリン治療は、血糖値を下げるだけでなく、御自身の膵臓を休ませる効果もあります。血糖値が安定すると、インスリンを中止し飲み薬だけになる患者さんもたくさんいます。糖尿病は治療の継続が何より重要であり、食事、運動療法は生活習慣と密接に関わっています。そのため、どのような生活習慣が糖尿病によいのか、逆に注意しなけらばならないか、など糖尿病の知識をたくさん学んで頂けるよう、複数の医療スタッフが支援させて頂いています。当院には、糖尿病教育入院があり、医師、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、検査技師等がチーム医療を行い、患者さんとともに、患者さんの生活に適した治療を考えるようにしています。糖尿病の治療経過中に何らかの原因で急激に血糖コントロールが悪化し、糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン昏睡など高血糖による急性合併症を発症してしまう場合もあり、高血糖の治療とともに、その発症の原因となった疾患の治療も行います。一般内科疾患として、尿路感染症や肺炎、低ナトリウム血症、低カリウム血症など電解質異常の入院も担当しています。


血液・腫瘍内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
130030xx99x9xx 非ホジキンリンパ腫手術なし手術・処置等29あり 70 9.84 12.88 1.43% 71.59
130060xx97x40x  骨髄異形成症候群手術あり手術・処置等24あり定義副傷病なし 54 11.04 18.03 1.85% 78.26 パス
130010xx99x9xx 急性白血病手術なし手術・処置等29あり 49 9.22 13.10 0.00% 79.35 パス
130030xx99x5xx 非ホジキンリンパ腫手術なし手術・処置等25あり 41 16.24 19.61 0.00% 77.49 パス
130060xx99x4xx 骨髄異形成症候群手術なし手術・処置等24あり 36 8.75 9.80 0.00% 74.44 パス

 血液・腫瘍内科で1番多く入院される患者さんは非ホジキンリンパ腫の患者さんです。リツキサンはリンパ腫細胞を特異的に破壊する分子標的薬剤で、抗がん剤と組み合わせることで治療効果が改善してきました。2023年からは自分の免疫力でリンパ腫細胞を治療するエプキンリが認可され、さらに治療可能性が広がっています。1回3週間の治療を6-8回反復するため、治療期間はおよそ半年になります。副作用が不安な方は各治療ごとに2週間ほど入院していただきますが、外来通院で治療ができる方も多くおられます。
 2番目に多い患者さんは骨髄異形成症候群の患者さんです。ビダーザというお薬は骨髄異形成症候群に対する効果が骨髄移植以外で唯一証明されている治療法です。骨髄移植が適応とならない70歳以上の方にお勧めしています。1回あたりの治療時間は30分程度と短いのですが、1週間連続して治療を行いますのでこの期間は入院していただきます。入院期間中に輸血を受けて頂く方もいます。
 3番目に多く入院されるのは急性白血病の患者さんです。急性白血病の治療には主に70歳までの方におこなう「強い治療」と、ご高齢の方や他の病気の合併症がある方に行う「やや弱い治療」があります。「強い治療」は私たちの最も得意とする分野です。最近は人口の高齢化にともない「強い治療」ができない方が増えてきましたが2021年にベネクレクスタという画期的な新薬が認可され「やや弱い治療」が大きく変わりました。私たちはベネクレクスタを含む「やや弱い治療」の経験を積みあげ十分に使いこなす事ができます。「強い治療」「やや弱い治療」どちらも入院が必要で患者さん・ご家族様にとってご負担は大きいのですが、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、リハビリテーションスタッフなど全職種が協力して、治療を完遂できるようサポートさせていただきます。


脳神経内科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
010060x2990401 脳梗塞(脳卒中発症3日目以内、かつ、JCS10未満)手術なし手術・処置等1なし手術・処置等24あり定義副傷病なし発症前Rankin Scale 0、1又は2 30 16.73 15.70 36.67% 76.17 パス
010230xx99x00x てんかん手術なし手術・処置等2なし定義副傷病なし 23 12.48 7.20 8.70% 63.52 パス
010060x2990400 脳梗塞(脳卒中発症3日目以内、かつ、JCS10未満)手術なし手術・処置等1なし手術・処置等24あり定義副傷病なし発症前Rankin Scale 3、4又は5 21 25.71 19.17 71.43% 77.10
010080xx99x0x1 脳脊髄の感染を伴う炎症手術なし手術・処置等2なし15歳以上 21 13.67 16.56 4.76% 48.10
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症手術なし 18 15.83 13.52 27.78% 77.22 パス

脳神経内科に入院される患者さんの約半数が脳血管障害の患者さんです。そして、そのほとんどが脳梗塞の方になります。脳梗塞の急性期治療を終えられた患者さんのうち、症状が軽い方はご自宅へ退院されています。麻痺等の症状がある方はリハビリのための入院が必要になります。


小児科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040090xxxxxxxx 急性気管支炎、急性細気管支炎、下気道感染症(その他) 106 6.18 5.96 0.00% 1.10
140010x199x0xx 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(2500g以上)手術なし手術・処置等2なし 55 6.53 6.07 0.00% 0.04
0400801199x00x 肺炎等(1歳以上15歳未満)手術なし手術・処置等2なし定義副傷病なし 35 5.51 5.62 0.00% 4.34
060380xxxxx0xx ウイルス性腸炎手術・処置等2なし 32 3.75 5.64 0.00% 4.44
180030xxxxxx0x その他の感染症(真菌を除く。)定義副傷病なし 32 4.88 8.61 0.00% 3.16

当院小児科では、一般的な病気から専門性の高い病気まであらゆる疾患群の診療に対応しており、小児の二次・三次救急を担当しているため、軽症からICUでの集中治療を必要とする重症まで様々な重症度の患者さんの入院を受け入れています。肺炎、気管支炎などの呼吸器感染症をはじめとする急性疾患については、新型コロナウイルス感染症を含め集中治療を要する重症例の転院依頼も受け入れています。慢性疾患についても、各小児科医師の専門性を活かして入院での検査や治療を継続しています。令和5年度には感染症の流行が続き、基礎疾患を持つ方を含め、呼吸器や消化管感染症を含め、感染症に関係する入院が多くなっています。的確な診断で、効率の良い加療を行い、入院期間の短縮を目指しています。また、当院の母子医療センターでは、出生時体重1000g未満を含む低出生体重児や手術が必要な児などの重症新生児の治療を行っており、福井県の総合周産期母子医療センターとして数多くの診療経験を有しています。急性期の新生児を、迎え搬送を含め他院から受け入れたり、母体搬送後に院内で安全に分娩管理した上で、NICUにて入院治療を行っています。当院NICUでの治療により全身状態が安定した新生児は、地域周産期母子医療センターと連携して転院治療を継続して頂くことで、一人でも多くの重症新生児を受け入れ地域医療に貢献出来るように努力しています。


外科・がん医療センター

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060335xx02000x 胆嚢炎等腹腔鏡下胆嚢摘出術等手術・処置等1なし手術・処置等2なし定義副傷病なし 105 6.53 6.87 0.95% 66.12 パス
060160x001xxxx 鼠径ヘルニア(15歳以上)ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 98 4.05 4.55 0.00% 71.31 パス
040040xx97x00x 肺の悪性腫瘍その他の手術あり手術・処置等2なし定義副傷病なし 72 8.82 9.89 0.00% 69.75 パス
060035xx010x0x 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍結腸切除術 全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術等手術・処置等1なし定義副傷病なし 71 14.41 15.12 5.63% 73.89 パス
060160x101xxxx 鼠径ヘルニア(15歳未満)ヘルニア手術 鼠径ヘルニア等 67 2.75 2.75 0.00% 3.48
当科では、新型コロナウイルス感染症が蔓延する状況であっても、緊急手術や悪性腫瘍の手術など、延期や中止が望ましくない手術についてはその実施に努めてきました。急性胆嚢炎や急性虫垂炎など、緊急手術が必要な患者さんを多く受け入れ、積極的に腹腔鏡下手術を行い、より早期の退院を可能としてきました。また、肺癌や大腸癌の患者さんに対しても、胸腔鏡・腹腔鏡を用いて手術を行うことで、患者さんへの負担を少なくして、より早期の退院を可能としています。 R5年度の胆嚢摘除術件数は105件でありR4年度の122件に比べてやや減少しています。鼠径ヘルニア手術件数はR4年度と同程度です。肺癌の手術件数はR4年度より増加し、結腸癌の手術件数はやや減少しています。


心臓血管外科 脳心臓血管センター

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
050163xx03x0xx 非破裂性大動脈瘤、腸骨動脈瘤ステントグラフト内挿術手術・処置等2なし 47 8.89 10.42 2.13% 76.81 パス
110280xx02x00x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全動脈形成術、吻合術 その他の動脈等手術・処置等2なし定義副傷病なし 34 4.15 7.57 8.82% 70.44 パス
050161xx9900xx 大動脈解離手術なし手術・処置等1なし手術・処置等2なし 24 14.00 16.49 4.17% 72.00 パス
050180xx02xxxx 静脈・リンパ管疾患下肢静脈瘤手術等 22 2.05 2.61 0.00% 61.05 パス
050161xx97x1xx 大動脈解離その他の手術あり手術・処置等21あり 14 25.86 28.09 21.43% 66.93

1位は、腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術
2位は、慢性腎不全に対する内シャント造設術
3位は、急性B型大動脈解離に対する降圧療法
4位は、下肢静脈瘤に対するストリッピング手術
5位は、急性A型大動脈解離に対する人工血管置換術

 腹部大動脈瘤の外科的治療のおよそ7割でステントグラフト内挿術を行っています。一方、胸部大動脈瘤でのステントグラフト内挿術は3割になります。ステントグラフト手術数は、現在では500例を超えています。当院には最先端の放射線透視装置を備えたハイブリッド手術室がありますので、精度の高い治療が可能です。福井県内で唯一の胸部大動脈瘤ステントグラフト指導医が在籍する施設であり、その責務は大きいと考えています。
 急性A型大動脈解離では、積極的にオープン型ステントグラフトを用いた上行弓部大動脈置換術を行っています。大動脈解離、大動脈瘤破裂、急性心筋梗塞といった緊急性のある疾患に対しては休日・夜間を問わず対応しています。スタンフォードB型大動脈解離の場合は、基本的に内科的治療になります。
 内シャント設置術では自己血管を用いることを基本としています。そのため、尺側皮静脈転位法も積極的に行っています。良好な静脈がない場合には人工血管を使用しています。
 下肢静脈瘤の手術法は、局所麻酔でのストリッピング手術になります。1泊2日の入院になります。


整形外科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160800xx01xxxx 股関節・大腿近位の骨折人工骨頭挿入術 肩、股等 149 23.93 25.50 85.81% 81.64 パス
070343xx02x0xx 脊柱管狭窄(脊椎症を含む。) 腰部骨盤、不安定椎内視鏡下椎弓切除術等手術・処置等2なし 64 8.92 11.53 3.13% 71.27 パス
070350xx01xxxx 椎間板変性、ヘルニア内視鏡下椎間板摘出(切除)術 後方摘出術等 63 8.30 9.53 1.59% 53.87 パス
160760xx97xx0x 前腕の骨折手術あり定義副傷病なし 44 2.82 4.76 2.27% 51.39 パス
07040xxx01xxxx 股関節骨頭壊死、股関節症(変形性を含む。)人工関節再置換術等 30 17.60 19.55 16.67% 69.43 パス

 整形外科で最も多い傷病名の分類は大腿骨近位部骨折に対する人工骨頭挿入術です。この骨折は高齢の方の代表的な骨折であり、寝たきりにならないようにほとんどの患者さんに手術治療を行っています。福井県では多くの医療機関が連携した大腿骨頚部骨折地域連携パスを運用しており、当院は手術を担当する急性期病院となっていますので、手術後90%近くの患者さんは地域連携パスを用いて回復期病院へ転院して頂き、継続的にリハビリを受けて頂いています。
 2番目に多い傷病名の分類は脊柱管狭窄症に対する内視鏡下椎弓形成術です。腰椎椎間板ヘルニアと同様、内視鏡下手術のために回復が早く、平均9日以内に退院可能です。 
 3番目に多い傷病名の分類は腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡下椎間板摘出術です。当院には脊椎内視鏡下手術の専門医が常勤しており、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など様々な脊椎疾患に対して積極的に内視鏡下手術を行っています。術後創部痛が少なく、回復も早いのが特徴であり、年々患者さんが増えてきています。
 4番目に多い傷病名の分類は前腕骨折の手術ありですが、その多くは手関節近くの骨折です。術後すぐに歩行できるため、数日で退院可能です。
 5番目に多い傷病名の分類は変形性股関節症や大腿骨頭壊死症に対する人工関節置換術です。当院では令和5年5月から人工股関節置換手術支援ロボット「ROSA Hip」を用いたロボット支援下人工股関節置換術を福井県で初めて導入しており、正確なインプラント設置や早期の術後回復が得られています。


脳神経外科 脳心臓血管センター

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160100xx99x00x 頭蓋・頭蓋内損傷手術なし手術・処置等2なし定義副傷病なし 50 3.18 8.38 6.00% 52.44 パス
010040x199x0xx 非外傷性頭蓋内血腫(非外傷性硬膜下血腫以外)(JCS10以上)手術なし手術・処置等2なし 45 23.13 22.61 57.78% 78.20 パス
160100xx97x01x 頭蓋・頭蓋内損傷その他の手術あり手術・処置等2なし定義副傷病あり 43 18.40 23.18 34.88% 80.07 パス
160100xx99x01x 頭蓋・頭蓋内損傷手術なし手術・処置等2なし定義副傷病あり 28 14.54 19.82 35.71% 74.18 パス
160100xx97x00x 頭蓋・頭蓋内損傷その他の手術あり手術・処置等2なし定義副傷病なし 26 9.77 9.88 15.38% 76.00 パス

脳神経外科は年365日24時間体制で脳血管障害・頭部外傷などの救急疾患に対応しております。ドクターヘリ・救急車を活用し福井県の約25%の患者さんが当院に搬送されて、速やかに治療されております。脳血管障害の患者さんは年間500例入院されておりますが、脳梗塞急性期の患者さんにはtPA血栓溶解療法・カテーテルによる経皮的脳血栓除去術が行われております。脳動脈瘤の患者さんにはカテーテルによる脳動脈瘤塞栓術もしくは開頭クリッピング術が施行されています。手術室で全身麻酔下に血管撮影の行えるハイブリッド手術室がありより安全に手術が可能です。脳腫瘍の患者さんは年間40例手術を施行しております。手術顕微鏡・内視鏡・外視鏡などの最先端の技術・機器を駆使して安全に手術を行うことを心がけております。悪性腫瘍の患者さんには高度先進医療である陽子線治療も適応されております。良性腫瘍では髄膜腫・下垂体腫瘍・聴神経腫瘍を中心に手術加療をしております。そのほか機能的脳神経外科として三叉神経痛・顔面痙攣の手術を行っております。


皮膚科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080020xxxxxxxx 帯状疱疹 39 8.51 9.29 0.00% 69.85 パス
080010xxxx0xxx 膿皮症手術・処置等1なし 28 13.46 12.88 7.14% 64.61
080190xxxxxxxx 脱毛症 11 3.00 3.31 0.00% 31.91 パス
070395xx970xxx 壊死性筋膜炎手術あり手術・処置等1なし - - 35.30 - -
070395xx99xxxx 壊死性筋膜炎手術なし - - 18.24 - -

 分類上位2つの診断群は、疾患の特性もあって、ほとんどが緊急入院の患者さんです。全国データと比較して当院での平均在院日数はほぼ同等の傾向にあります。当院は三次救急医療機関であり、同じ診断病名でもより重症の症例が占める割合が多くあり、治療に注力しています。
 脱毛症に対しては、入院の上でステロイドパルス療法を行っています。3日間注射予定の入院で、全例予定通りの退院となりました。
下位少数の重症疾病や悪性腫瘍などの診断群については、入院加療が可能な施設は県内でも限られます。必要に応じた侵襲的治療や化学療法などを、日本皮膚科学会の標準的治療に準じて行っています。
 記載以外の疾患において、特に乾癬やアトピー性皮膚炎では、外用療法で効果不十分な症例に対しては内服薬や光線療法を追加し、さらに重症例では注射による生物学的製剤あるいは免疫抑制剤の導入を行っています。
 その他の疾患においても、基幹総合病院の特色を活かして他科との連携を図りながら、最新最善の医療を提供できるように努めています。なお、当科における診療方針として、 可能なものは手術も含めて外来での診療を基本に検討しています。


泌尿器科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
110080xx991xxx 前立腺の悪性腫瘍手術なし手術・処置等1あり 122 2.14 2.44 0.00% 71.91 パス
110070xx03x0xx 膀胱腫瘍膀胱悪性腫瘍手術 経尿道的手術手術・処置等2なし 88 5.51 6.85 0.00% 75.43 パス
110080xx03xxxx 前立腺の悪性腫瘍経皮的放射線治療用金属マーカー留置術 74 2.70 2.71 0.00% 71.97 パス
110080xx01xxxx 前立腺の悪性腫瘍前立腺悪性腫瘍手術等 47 9.47 11.19 0.00% 66.36 パス
110310xx99xxxx 腎臓又は尿路の感染症手術なし 40 7.40 13.52 5.00% 69.38

 検診等でPSA高値の場合、積極的に前立腺針生検検査を行っています。鎮痛剤を注射したのち、肛門から挿入した示指ぐらいの太さの超音波の器械をガイドに、前立腺の10箇所から針で検体を採取する検査です。1泊2日で行っております。
 残念ながら、前立腺癌と診断された場合には、ロボット支援下腹腔鏡下手術(お腹に6箇所穴を空けて、ロボット用手術器具を挿入して行う精緻な手術)を積極的に勧めています。また、陽子線治療も行っています。より精密な陽子線治療を行うため、下半身麻酔下に前立腺に3mm大の金属マーカーを留置しています。
 膀胱癌につきましては、下半身麻酔下に尿道から内視鏡を挿入して、電気メスで腫瘍を削り取る手術を行っています。術後再発予防に抗癌剤注入も行っています。
 尿管結石に伴う急性腎盂腎炎に対しては、細菌が血液内に入り危険な状態になることがありますので、24時間体勢で、尿管に細い管を挿入するなどの処置を行い、状態が悪いときは集中治療室で手厚い治療を行っています。


産科・婦人科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
120180xx01xxxx 胎児及び胎児付属物の異常子宮全摘術等 69 10.68 9.34 0.00% 32.83 パス
120060xx02xxxx 子宮の良性腫瘍腹腔鏡下腟式子宮全摘術等 56 5.79 5.93 0.00% 43.61 パス
12002xxx02x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍子宮頸部(腟部)切除術等手術・処置等2なし 46 3.02 2.96 0.00% 40.17 パス
120070xx02xxxx 卵巣の良性腫瘍卵巣部分切除術(腟式を含む。) 腹腔鏡によるもの等 35 6.46 6.00 0.00% 46.14 パス
12002xxx01x0xx 子宮頸・体部の悪性腫瘍子宮悪性腫瘍手術等手術・処置等2なし 33 10.79 10.10 0.00% 56.55 パス

 高齢妊娠などで合併症妊娠が増加しており、元気な赤ちゃんを出産するための帝王切開の重要性が増しています。当院は総合周産期母子医療センターを併設しているため、ハイリスク妊娠の妊婦さんが多く集まります。そのため、全分娩に占める帝王切開率が約30%となっていますが、ほとんどの方が元気な赤ちゃんを出産されています。
 子宮筋腫などで子宮を摘出する手術には、お腹を10cm程度切開し子宮を摘出する方法(腹式子宮全摘出術)、お腹に一切傷をつけず膣から子宮を摘出する方法(腟式子宮全摘出術)、腹腔鏡やロボットを使って子宮を摘出する方法(腹腔鏡下腟式子宮全摘出術、ロボット支援下子宮全摘術)があります。いずれを選択するかは子宮の大きさ、癒着の程度、経腟分娩の有無などを参考に患者さんと相談しながら決めています。腹腔鏡やロボットを使って子宮を摘出する方法は、出血量の少なさ、手術侵襲の低さ、高度癒着症例にも対応できるなどの応用力の高さから、有用な方法であり、近年当院では実施回数が増えています。           子宮頚部の異形上皮や、上皮内癌では子宮を摘出することなく、病変部の子宮頚部のみを摘出する子宮頚部円錐切除術を行います。この手術方法は妊娠を前提として行う手術方法です。結婚前などの若い患者さんで、この手術後に妊娠された方も大勢いらっしゃいます。
 卵巣は女性の体の中で最も腫瘍の種類が多い臓器です。がんの様なものもありますが、その頻度は低く、皮様嚢腫(卵巣内に脂肪や毛髪がたまるもの)や子宮内膜症性嚢胞(卵巣内にチョコレート色の血液がたまるもの)、あるいは、唾液のような粘液がたまったり、尿のようなさらさらした水がたまるものなどの良性腫瘍が比較的多い状況です。これらの多くは薬物では完治しないので、腹腔鏡を用いて病巣部だけ摘出したり、あるいは、付属器全部を摘出したりします。腹部をほとんど切開しないので痛みも軽度で入院期間も短くなっています。
 子宮体部子宮頸部の悪性腫瘍が増加しています。子宮体がんに対しては早期であれば腹腔鏡下手術が実施されます。子宮頚がんに対しては子宮頸部を広汎に切除する広汎子宮全摘術が実施されます。
 子宮体部子宮頸部の悪性腫瘍に対し、症例によっては放射線治療、化学療法を用い集学的治療を行うことによって完治を目指します。


眼科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
020110xx97xxx0 白内障、水晶体の疾患手術あり片眼 351 1.73 2.54 0.28% 76.02 パス
020110xx97xxx1 白内障、水晶体の疾患手術あり両眼 36 3.72 4.46 0.00% 74.06 パス
020200xx9710xx 黄斑、後極変性手術あり手術・処置等1あり手術・処置等2なし - - 5.67 - - パス
020240xx97xxx0 硝子体疾患手術あり片眼 - - 4.88 - - パス
020250xx97xxxx 結膜の障害手術あり - - 3.00 -

白内障に対する手術が最も多く、片眼の場合は日帰りまたは1泊2日入院で、両眼の場合は3泊4日入院で治療を行っています。網膜硝子体疾患(黄斑前膜、黄斑円孔などの黄斑疾患あるいは、糖尿病網膜症など)の手術がこれに次いで多くなっています。患者さんの負担を少なくして早く退院できるよう、広角眼底観察システムを用いた極小切開硝子体手術(25ゲージまたは27ゲージ)を導入しています。手術について不安の強いかたには、低濃度笑気による吸入麻酔をおこなっています。


耳鼻いんこう科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030240xx99xxxx 扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽頭喉頭炎手術なし 54 4.76 5.51 0.00% 40.52 パス
030428xxxxxxxx 突発性難聴 47 7.32 8.55 0.00% 54.79 パス
030230xxxxxxxx 扁桃、アデノイドの慢性疾患 30 9.73 7.53 0.00% 22.70 パス
030350xxxxxxxx 慢性副鼻腔炎 29 4.93 6.02 0.00% 59.24 パス
030400xx99xxxx 前庭機能障害手術なし 19 4.00 4.73 0.00% 63.37

扁桃周囲膿瘍に対して、早期に扁桃周囲膿瘍切開術を行い、速やかな治癒をめざしています。
突発性難聴は突然耳が聞こえにくくなる疾患で、発症後できるだけ早期に治療を始めています。
小児の扁桃、アデノイド肥大による睡眠時無呼吸に対して、PITA手術(口蓋扁桃・咽頭扁桃切除術)を実施しています。一般的な扁桃摘出術と比べ、安全性が高く、痛みの少ない手術方法です。
慢性副鼻腔炎の手術は、全例でナビゲーションを使用して安全性を確保しています。入院期間や術後治療の期間が短く満足度の高い手術となっています。
顔面神経麻痺は、多くの場合、薬剤の治療で治癒しますが、必要な時には顔面神経減荷術を実施します。


核医学科

DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
100020xx99x2xx 甲状腺の悪性腫瘍手術なし手術・処置等22あり 14 4.93 5.83 0.00% 56.57 パス
06007xxx9904xx 膵臓、脾臓の腫瘍手術なし手術・処置等1なし手術・処置等24あり - - 7.23 - - パス
180050xx99x1xx その他の悪性腫瘍手術なし手術・処置等21あり - - 12.14 - -
040040xx99040x 肺の悪性腫瘍手術なし手術・処置等1なし手術・処置等24あり定義副傷病なし - - 8.33 - -
100020xx99x5xx 甲状腺の悪性腫瘍手術なし手術・処置等25あり - - 8.26 - - パス

核医学科では様々な種類の放射性物質を用いた放射線治療(標的アイソトープ治療)に取り組んでおります。一昨年より神経内分泌腫瘍の治療が追加となり、今年度より専用治療病室を増設いたしました。当該治療専任の放射線治療専門医が行っており、県内外から広く患者さんを受け入れております。標的アイソトープ治療に特化した専門医や設備を有する医療機関は全国的にも希少であり、最先端の治療にいち早く対応できる体制を整えているのが当院の特色です。
 

指標3 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数【ファイルをダウンロード

初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 98 27 7 41 2 27 1 UICC第8版
大腸癌 66 58 58 82 2 77 1 UICC第8版
肝癌 10 21 24 8 2 116 1 UICC第8版
肺癌 75 24 67 106 42 172 1 UICC第8版
乳癌 59 52 42 4 0 12 1 UICC第8版

※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約

当院の令和5年度における5大癌の病期分類と初発、再発患者数です。このデータは検査や治療途中の患者さんの状況を含んでいるため、がん登録からのデータとは異なり、厳密には正確な数字を表しているわけではありませんが、当院のある程度の立ち位置を示しているものと考えられます。

令和5年度はそれまでとは異なり、新型コロナ感染症の影響(がん検診の中止、病院の受診控え)が一段落し、がん診療においても平静を取り戻した時期に相当します。

前年度までの状況との比較を各臓器別に見ていくと、胃癌でのStage I(早期)患者の減少、肺癌のStage IV(進行)患者の減少が特に目立ちます。また、再発の患者さんは大腸癌、肝癌で増加し、乳癌で減少しています。その他、例年の傾向として、胃癌、乳癌は早期発見の方(Stage I)が非常に多いのに対し、大腸癌、肺癌は進行した方(Stage IV)が多いことが示されています。

これらのことは、福井県立病院が福井県内を代表してがん検診や人間ドックを推進していることが、胃癌、乳癌では早期の患者さんの発見、治療に結びついているのに対し、肺癌、大腸癌などでは、新型コロナの影響が尾を引き、非常に進行した患者さんが当院救命救急センターなどに受診される状態が継続していることを示しているといえます。

進行したがんとなる前に、日頃から生活習慣の改善に心がけ、がん検診や人間ドックを定期的に受けることを心がけましょう。

指標4 成人市中肺炎の重症度別患者数等【ファイルをダウンロード

患者数 平均
在院日数
平均年齢
軽症 30 11.23 59.47
中等症 124 14.03 73.25
重症 36 12.42 81.78
超重症 11 15.55 80.82
不明 - - -

 市中肺炎とは、病院外で日常生活をしていた人に発症した肺炎です。成人市中肺炎のなかでは入院適応となる中等症患者さんの入院が最も多い状況です。軽症から中等症、そして重症へと病気が重くなるにつれて、治療に日数がかかります。
 肺炎で亡くなられる方の96.5%は65歳以上の患者さんで、重症化する前の早期発見、早期治療が非常に大切です。咳や発熱、呼吸困難などの症状がありましたら、早めにかかりつけ医を受診してください。肺炎兆候がありましたら、紹介医を通じて呼吸器内科で対応させていただきます。また、当院救急外来は24時間対応を行っています。さらに当院は集中治療室(ICU)と高度治療室(HCU)を有していますので、超重症肺炎にも十分に対応可能です。

指標5 脳梗塞の患者数等【ファイルをダウンロード】 

ICD10 傷病名 発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
I63$ 脳梗塞                        3日以内 225 22.55 76.78 47.30%
その他 15 21.00 78.20 3.32%

 脳梗塞の患者さんについては、主に脳神経外科と脳神経内科で診療に当たっています。当院は高度急性期病院であるため、脳梗塞を発症して3日以内の急性期の患者さんが9割以上を占めています。
 

指標6 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)【ファイルをダウンロード


消化器内科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2cm未満) 357 0.03 1.03 0.00% 68.75 パス
K6532 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術(早期悪性腫瘍胃粘膜) 84 1.00 5.30 0.00% 76.06 パス
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 64 2.80 15.63 0.09% 77.83 パス
K721-4 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術 57 1.00 4.84 0.00% 69.88 パス
K6871 内視鏡的乳頭切開術(乳頭括約筋切開のみ) 57 2.14 7.05 0.04% 74.58
 当科で令和5年度に施行された手術の中で一番多い手術は内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術です。最近では大腸内視鏡検査の普及に伴い、大腸ポリープや大腸腫瘍性病変が多く発見されるようになったことに加え、食生活の欧米化に伴い大腸腫瘍性疾患の患者さんが増加していると言われています。これらの病変に対する治療としての内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術を受ける患者さんが多くなっています。早期発見、早期治療により進行大腸癌の予防ができることから、今後も増加していく治療であると思われます。
 2番目に多い手術は胃腫瘍性病変の治療としての内視鏡的早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術です。内視鏡検査の精度向上により、内視鏡手術で治療が可能なうちに、早期に胃癌病変を発見できる患者さんの数が増えてきているためです。 外科手術に比べて生活への影響が少ないことや、高齢の方が増加していることもあり、治療を受ける患者さんのニーズはしばらく続くものと思われます。
 3番目と5番目に多いのは、主に救急外来より胆管炎や閉塞性黄疸で緊急入院される患者さんに対する手術です。胆管炎や閉塞性黄疸は胆管内の結石や腫瘍が胆管を閉塞して起こす病気であり、詰まってしまった胆汁を元通りに十二指腸に流れるようにする治療が内視鏡的乳頭切開術や内視鏡的胆道ステント留置術です。患者さんの状態が安定してから治療することもありますが、どうしても緊急に治療しなければならない場合もあります。この治療の際には結石に対する手術を施行する場合もあり、患者さんの状態によっては術前・術後とも入院日数が長くなることがあります。胆管にステントを留置したり、胆管内の結石を取り出すためには、胆管の出口である十二指腸乳頭部の切開が必要です。当院ではクラッシャーといった石を砕く道具を使う患者さんよりも、カテーテルの先についているバルーンという風船で10mm以下の結石を掻き出す患者さんが多い傾向にあります。
 近年、大腸腫瘍性病変の増加が認められることは一番多い手術で述べましたが、その中でも粘膜癌でありながら20mm以上病変がひろがっているためにスネアという10~15mmの病変を切除する器具では切除出来ない病変が多く見つかるようになりました。そのため電気メスで粘膜の下を剥離する早期悪性腫瘍粘膜下層剥離術の件数が増えてきました。外科的切除も根治的な治療が可能ですが、出来るだけ腹壁に傷を付けたくない患者さんも多く、安全性、根治性などを考慮して同治療を施行させて頂いております。


循環器内科 脳心臓血管センター

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K616-41 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 初回 126 0.08 0.72 0.79% 72.65 パス
K5493 経皮的冠動脈ステント留置術 その他のもの 95 2.36 2.60 0.00% 69.85 パス
K5951 経皮的カテーテル心筋焼灼術 心房中隔穿刺又は心外膜アプローチを伴うもの 74 2.31 2.89 0.00% 69.53 パス
K616 四肢の血管拡張術・血栓除去術 52 1.10 3.50 9.62% 75.75 パス
K5491 経皮的冠動脈ステント留置術 急性心筋梗塞に対するもの 48 0.00 15.06 4.17% 70.56 パス

慢性虚血性心疾患に対するPCI(経皮的冠動脈形成術)が多くを占め、急性心筋梗塞に対する緊急PCIも多くの症例に対して治療しています。近年透析シャントに対するVAIVT(バスキュラーアクセス拡張術)、末梢動脈疾患に対するEVT(末梢血管形成術)、不整脈に対するCA(カテーテルアブレーション、心筋焼灼術)が着実に増加しています。


腎臓・膠原病内科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術(内シャント造設術)単純 30 8.70 24.07 16.67% 70.67 パス
K616-41 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 初回 16 0.25 7.19 25.00% 69.63 パス
K6147 バイパス移植術(その他の動脈) 12 9.08 16.92 16.67% 73.92 パス
K635-3 連続携行式腹膜灌流用カテーテル腹腔内留置術 - - - - -
K616-42 経皮的シャント拡張術・血栓除去術 1の実施後3月以内に実施 - - - - - パス

最も多く行われている手術は内シャント造設術です。腎不全の患者さんが血液透析を始める際や、透析患者さんで内シャントが使えなくなった場合に実施されます。この手術は心臓血管外科の医師が担当します。
次に多いのは経皮的シャント拡張術・血栓除去術です。内シャントの機能が低下したり、急に閉塞した場合に、循環器内科の医師がカテーテルを使ってシャントを治療する手術(VAIVTと呼ばれます)を行います。
内シャントの手術では、吻合する血管が少ない場合、人工血管を用いた血管移植術やバイパス移植術が行われることがあります。
また、腹膜透析を始める際には、腹腔内にカテーテルを留置する手術が行われます。


外科・がん医療センター

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 114 1.14 4.97 1.75% 67.17 パス
K634 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側) 91 0.90 1.78 0.00% 52.88 パス
K6335 ヘルニア手術 鼠径ヘルニア 77 0.90 1.42 0.00% 32.01 パス
K719-3 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 77 3.14 10.96 3.90% 73.82 パス
K4762 乳腺悪性腫瘍手術(乳房部分切除)(腋窩部郭清伴わない) 53 1.11 4.00 0.00% 59.57 パス

 当院では新型コロナウイルス感染症が拡大している状況にあっても、救急医療を維持してきました。緊急手術の適応となる急性胆嚢炎に対する外科手術も制限することなく施行してきました。手術においては早期退院が可能な腹腔鏡下手術を積極的に行っています。R5年度の腹腔鏡下胆嚢摘出術件数は114件でR4年度より減少していますが、これは前年度新型コロナウィルス感染の蔓延で近隣の病院が緊急手術を制限したため当院での受け入れが多かったためと考えています。
 鼡径ヘルニアは脆弱になった腹壁の穴から腸管が飛び出してくるようになった状態です。手術で腹壁の穴をふさぐことになりますが、当科では腹腔鏡下鼡径ヘルニア手術を多く行っています。手術後の疼痛軽減が早いため、手術後2日程での退院となっています。腹壁瘢痕ヘルニアとは過去に腹部手術を行った切開創部の腹壁縫合部が哆開し、皮下に腸管が飛び出すようになる状態です。根治には外科治療が必要となり当院でも多くの手術を行いました。
 悪性腫瘍の手術に関しては、可能な限り早期の手術実施に努めてきました。結腸(大腸)癌に対しても腹腔鏡手術を行っておりR5年度の手術件数はR4年度と比べて若干減少 しています。乳癌の手術では、患者さんの要望に応えなるべく乳房を温存する乳房部分切除を主に行っています。


心臓血管外科 脳心臓血管センター

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K5612ロ ステントグラフト内挿術(腹部大動脈) 31 2.32 6.52 6.45% 77.65 パス
K6121イ 末梢動静脈瘻造設術(内シャント)単純 30 0.13 1.97 6.67% 69.70 パス
K6171 下肢静脈瘤手術(抜去切除術) 22 0.45 1.09 0.00% 60.14 パス
K5612イ ステントグラフト内挿術(胸部大動脈) 21 2.24 14.24 14.29% 75.10 パス
K560-22ニ オープン型ステントグラフト内挿術(上行弓部同時・その他) 14 2.21 27.00 35.71% 69.07

 腹部大動脈瘤の外科的治療のおよそ7割でステントグラフト内挿術を行っています。一方、胸部大動脈瘤でのステントグラフト内挿術は3割になります。ステントグラフト手術数は、現在では500例を超えています。当院には最先端の放射線透視装置を備えたハイブリッド手術室がありますので、精度の高い治療が可能です。福井県内で唯一の胸部大動脈瘤ステントグラフト指導医が在籍する施設であり、その責務は大きいと考えています。
 急性A型大動脈解離では、積極的にオープン型ステントグラフトを用いた上行弓部大動脈置換術を行っています。大動脈解離、大動脈瘤破裂、急性心筋梗塞といった緊急性のある疾患に対しては休日・夜間を問わず対応しています。
 内シャント造設術では自己血管を用いることを基本としています。そのため、尺側皮静脈転位法も積極的に行っています。良好な静脈がない場合には人工血管を使用しています。
 下肢静脈瘤の手術法は、局所麻酔でのストリッピング手術になります。1泊2日の入院になります。


整形外科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0461 骨折観血的手術(大腿) 88 2.17 20.07 88.16% 79.34 パス
K0811  人工骨頭挿入術(股) 66 2.91 19.85 86.36% 83.36 パス
K134-22 内視鏡下椎間板摘出(切除)術 後方摘出術 65 1.65 6.49 1.54% 54.35 パス
K142-5 内視鏡下椎弓形成術 62 1.11 7.31 3.23% 70.15 パス
K0821 人工関節置換術(股) 53 1.08 15.96 13.33% 71.40 パス

 整形外科で最も多い手術は大腿骨に対する骨折観血的手術です。特に高齢の方の代表的な骨折である大腿骨転子部骨折がその多くを占めています。
 2番目に多い手術も高齢の方の代表的な骨折である大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭挿入術です。これらの骨折では寝たきりを防ぐために積極的に手術治療を行っています。福井県では多くの医療機関が連携した大腿骨頚部骨折地域連携パスを運用しており、当院は手術を担当する急性期病院となっていますので、ほとんどの患者さんは術後2~3週間で地域連携パスを用いて回復期病院へ転院して頂き、継続的にリハビリを受けて頂いています。
 3番目に多い手術は腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡下椎間板摘出術です。当院には脊椎内視鏡下手術の専門医が常勤しており、腰椎椎間板ヘルニアはもちろん、4番目に多い脊柱管狭窄症に対する椎弓形成術においても積極的に内視鏡下手術を行っています。内視鏡下手術は傷が小さいだけでなく、術後創部の痛みも少ないため、いずれの手術においても術後1週間程度で退院可能です。
 5番目に多い手術は人工股関節置換術です。当院では令和5年5月から人工股関節置換手術支援ロボット「ROSA Hip」を用いたロボット支援下人工股関節置換術を福井県で初めて導入しており、正確なインプラント設置や早期の術後回復が得られています。


脳神経外科 脳心臓血管センター

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K164-2 慢性硬膜下血腫洗浄・除去術(穿頭による) 48 0.67 14.27 31.25% 82.25 パス
K178-4 経皮的脳血栓回収術 27 0.41 29.93 59.26% 75.56 パス
K1781 脳血管内手術(1箇所) 19 3.32 30.89 52.63% 65.37
K1692 頭蓋内腫瘍摘出術(その他のもの) 13 5.15 29.00 46.15% 64.23 パス
K609-2 経皮的頸動脈ステント留置術 12 3.17 13.92 25.00% 76.58 パス

 慢性硬膜下血腫は高齢の患者さんに多い病気で、軽度の外傷を契機に発症します。最近、高齢化や血液を固まりにくくする薬を服用される方が増えてきたため、本疾患が増加傾向です。緊急手術の対象となる事が多く、当科でも救急搬送される入院患者さんの割合が増えてきています。
 頭蓋内腫瘍摘出術は、良性腫瘍では髄膜腫や下垂体腺腫の患者さんに、悪性腫瘍では転移性脳腫瘍や膠芽腫の患者さんに多く実施しています。手術は顕微鏡・内視鏡やナビゲーション、モニターを駆使して安全に行っています。悪性腫瘍の場合は化学療法や放射線(陽子線)治療を含む集学的治療が必要となります。
 頚動脈狭窄症に対してはカテーテルによる頚動脈ステント術を施行しています。また、近年、血栓回収術を含めカテーテルによる脳血管内手術の割合が増えており、救急搬送や他院から依頼された患者さんに実施しています。
 未破裂や破裂(くも膜下出血を合併した)の脳動脈瘤に対してはカテーテルによる脳動脈瘤塞栓術と開頭によるクリッピング術のどちらか安全な治療法を選択しています。 
 ハイブリッド手術室が運用開始となり、全身麻酔下にいっそう安全・確実に治療を行っています。


泌尿器科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術)(電解質溶液利用) 92 1.26 3.34 0.00% 75.24 パス
K007-2 経皮的放射線治療用金属マーカー留置術 74 0.72 0.99 0.00% 71.97 パス
K843-4 腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いる) 47 1.15 7.32 0.00% 66.36 パス
K768 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術 31 0.00 1.00 0.00% 57.71 パス
K7811 経尿道的尿路結石除去術 レーザーによるもの 29 1.07 2.76 0.00% 58.79 パス

 膀胱癌の約半数が再発することを考慮し、多くの患者さんで下半身麻酔下に尿道から内視鏡を挿入して、腫瘍を電気メスで削り取る手術を行っています。さらに、術後再発予防に抗癌剤注入も行っています。
 前立腺癌に対して陽子線治療を行っていますが、より精密に施行するため、下半身麻酔下に前立腺に3mm大の金属マーカーを留置しております。前立腺癌の治療として他には、ロボット支援下腹腔鏡下手術(お腹に6箇所穴を空けて、ロボット用手術器具を挿入して行う精緻な手術)を積極的に勧めています。
 尿路結石に対しては、令和元年10月に導入した新規の体外衝撃波破砕装置によって結石を破砕し、患者さんがなるべく早く痛みから解放されるように努めています。体外衝撃波破砕装置で砕けなかった場合等は、全身麻酔か下半身麻酔をかけて、細い内視鏡を尿管内に挿入し、レーザーで細かく砕いた後、砕石片を抽石してきます。
 


産科・婦人科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8982 帝王切開術(選択帝王切開) 80 12.61 6.79 0.00% 32.80 パス
K877-2 腹腔鏡下腟式子宮全摘術 57 1.05 4.07 0.00% 46.42 パス
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側) 腹腔鏡によるもの 57 1.25 4.46 0.00% 46.75 パス
K867 子宮頸部(腟部)切除術 47 1.00 1.02 0.00% 40.26 パス
K8981 帝王切開術(緊急帝王切開) 47 10.83 7.49 0.00% 32.62 パス

 近年出産数は減少していますが、高齢妊娠が増加してリスク(危険度が高い)のある妊婦さんが増加していることもあり、赤ちゃんに負担をかけないように帝王切開を行う機会が増えています。帝王切開による出産は自然分娩による出産より感染症、血栓症などの合併症の頻度が多少高くなるものの、経腟分娩が危険と判断される際には帝王切開を行います。特に当院は総合周産期母子医療センターを併設しているため、緊急の(30分以内)帝王切開による娩出を必要とする妊婦さんも搬送されてきます。
 子宮筋腫などで子宮を摘出する手術には、お腹を10cm程度切開し子宮を摘出する方法(腹式子宮全摘出術)、お腹に一切傷をつけず膣から子宮を摘出する方法(腟式子宮全摘出術)、腹腔鏡やロボットを使って子宮を摘出する方法(腹腔鏡下腟式子宮全摘出術、ロボット支援下子宮全摘術)があります。いずれを選択するかは子宮の大きさ、癒着の程度、経腟分娩の有無などを参考に患者さんと相談しながら決めています。腹腔鏡やロボットを使って子宮を摘出する方法は、出血量の少なさ、手術侵襲の低さ、高度癒着症例にも対応できるなどの応用力の高さから、有用な方法であり、近年当院では実施回数が増えています。
 子宮付属器とは子宮の両側にある卵巣と卵管のことです。このうち卵巣は女性の体の中で最も腫瘍(おでき)の種類が多い臓器です。がんの様なものもありますが、その頻度は低く、皮様嚢腫(卵巣内に脂肪や毛髪がたまるもの)や子宮内膜症性嚢胞(卵巣内にチョコレート色の血液がたまるもの)、あるいは、唾液のような粘液がたまったり、尿のようなさらさらした水がたまるものなどの良性腫瘍が比較的多い状況です。これらの多くは薬物では完治しないので、腹腔鏡を用いて病巣部だけ摘出したり、あるいは、付属器全部を摘出したりします。腹部をほとんど切開しないので痛みも軽度で入院期間も短くなっています。
 ここ十数年の間に若年者の子宮の入り口に出来る子宮頚癌が増加しています。初期であれば、子宮頚部円錐切除術、すなわち、子宮の入り口の病巣だけを切り取って子宮本体を残す子宮頚部(腟部)切除術で治療し、その後の妊娠を可能とさせています。癌が進行していた場合には広範囲に子宮を摘出しなくてはなりません。しかし、当科では、広範囲に子宮を取らなくてはならない患者さんであっても、将来妊娠を希望されており、がんの範囲も比較的小さい場合には、広汎子宮頚部摘出術を行って妊娠の可能性を残すようにしています。


眼科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K2821ロ 水晶体再建術(眼内レンズ挿入)(その他) 386 0.05 0.86 0.26% 75.87 パス
K2801 硝子体茎顕微鏡下離断術(網膜付着組織を含むもの) 10 0.00 5.00 0.00% 65.60 パス
K224 翼状片手術(弁の移植を要するもの) - - - - - パス
K279 硝子体切除術 - - - - - パス
K2191 眼瞼下垂症手術(眼瞼挙筋前転法) - - - - - パス

白内障に対する手術が最も多く、片眼の場合は日帰りまたは1泊2日入院で、両眼の場合は3泊4日入院で治療を行っています。黄斑疾患、糖尿病網膜症、網膜剥離など硝子体疾患に対する硝子体手術がこれに次いで多くなっています。広角眼底観察システムを用いた極小切開硝子体手術(25ゲージまたは27ゲージ)を導入しています。また、眼瞼下垂など、眼形成手術についても積極的に取り組んでいます。患者さんが早く退院できるよう、体の負担が少ない手術を心がけています。手術について不安の強いかたには、低濃度笑気による吸入麻酔をおこなっています。


耳鼻いんこう科

Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K3772 口蓋扁桃手術(摘出) 33 1.00 7.79 0.00% 24.55 パス
K340-5 内視鏡下鼻・副鼻腔手術3型(選択的(複数洞)) 29 0.97 3.07 0.00% 60.14 パス
K347-3 内視鏡下鼻中隔手術Ⅰ型(骨、軟骨手術) 17 1.00 3.18 0.00% 37.24
K368 扁桃周囲膿瘍切開術 11 0.00 4.55 0.00% 48.00
K4631 甲状腺悪性腫瘍手術(切除)(頸部外側区域郭清を伴わない) 11 1.00 4.09 0.00% 54.00 パス

 口蓋扁桃手術: 小児の扁桃肥大では、パワーデバイスを用い、安全性が高く術後の痛みが少ないPITA手術(口蓋扁桃・咽頭扁桃切除術)を行っています。
 内視鏡下鼻・副鼻腔手術3型: 全例でナビゲーションを使用し安全性を確保しています。入院期間や術後治療の期間が短く満足度の高い手術となっています。
 内視鏡下鼻中隔手術: 患者満足度の高い手術を実施しています。
 扁桃周囲膿瘍切開術: 治療期間が短くなるよう、なるべく早く実施するようにしています。
 甲状腺悪性腫瘍手術: 安全性が高く、整容に配慮した手術を実施しています。
 

指標7 その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)【ファイルをダウンロード

DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 2 0.02%
異なる 3 0.02%
180010 敗血症 同一 56 0.43%
異なる 6 0.05%
180035 その他の真菌感染症 同一 0 0.00%
異なる 1 0.01%
180040 手術・処置等の合併症 同一 33 0.26%
異なる 1 0.01%

 播種性血管内凝固症候群に関しては、「入院契機と同一」とは、患者さんが播種性血管内凝固症候群の診断で入院したことを意味しますし、「入院契機と異なる」とは、別の病気で入院したものの、入院中に播種性血管内凝固症候群を発症して、その治療に医療資源を多く投入したことを意味します。R5年度症例数はR4年度同様、低水準にあります。
 敗血症に関しては、「入院契機と同一」の患者さんの数はR5年度はR4年度とほぼ同水準で、最初から敗血症をきたしていた重篤な患者さんの人数に大きな変化はありません。入院後の敗血症を発症した患者さんは R5年度はこれまで同様低水準にあります。
 手術・処置等の合併症とは、手術や処置を行う場合に一定の割合で発生してしまういわゆる”医療ミス”を示すものではありません。「入院契機と同一」の患者さんは、最初から合併症の治療を目的に当院に入院された患者さんであり、「入院契機と異なる」の患者さんは入院中に手術や処置等を行った後に合併症のみられた患者さんの数を意味しています。「入院契機と同一」の患者さんの中には当院の患者さんだけでなく、他の病院からの患者さんも数多く含まれています。R4年度は38例でしたが、R5年度は33例でありR1年度の119例から大幅に減少した状況を維持しています。その理由として、新型コロナウイルス感染症により(当院を含む)どの医療機関でも患者数が減少した事が影響したと推測しています。
 

医療の質指標

リスクレベルが「中」以上の手術を施行した患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率【ファイルをダウンロード】 

肺血栓塞栓症発症のリスクレベルが
「中」以上の手術を施行した
退院患者数(分母)
分母のうち、肺血栓塞栓症の
予防対策が実施された患者数(分子)
リスクレベルが「中」以上の手術を
施行した患者の肺血栓塞栓症の
予防対策の実施率
1,713 1,618 94.45%

 肺血栓塞栓症はエコノミークラス症候群ともいわれ、特に下肢の静脈血栓が流れて肺の血管に詰まることで呼吸困難や胸痛を引き起こし、死に至ることもある疾患です。寝たきりの方や手術後に発症することが多く、肺血栓塞栓症の発生リスクが高い手術を施行する場合は、術前、術中、術後において予防対策を実施することが有効とされています。
 予防対策としては弾性ストッキングの着用や間歇的空気圧迫装置、抗凝固薬の投与があります。
 当院での予防対策実施率は 94.45%と非常に高水準となっています。 
 

血液培養2セット実施率 【ファイルをダウンロード】 

血液培養オーダー日数(分母) 血液培養オーダーが1日に
2件以上ある日数(分子)
血液培養2セット実施率
4,004 3,292 82.22%

 血液培養は、血液中から原因微生物を捉え、確定診断から最適に治療に導くことができる重要な検査の一つです。近年、感染症の診断精度を高めるために、血液培養を適正化する手段のひとつである「血液培養の複数セット採取」を推進する医療機関が増えています。血液培養を1セット採取した場合と2セット採取した場合とでは検出率に差が生じ、2セット以上採取したほうがより正確に原因微生物を特定できるため、2セット以上を行うことが推奨されています。
 当院の特徴として、小児科での血液培養(小児では1セットが標準)の数が多いため、実施率が低くなっています。今後もより高い水準を維持できるように啓蒙活動を行っていきます。
 

広域スペクトル抗菌薬使用時の細菌培養実施率  【ファイルをダウンロード】 

広域スペクトルの抗菌薬が
処方された退院患者数(分母)
分母のうち、入院日以降抗菌薬処方日
までの間に細菌培養同定検査が
実施された患者数(分子)
広域スペクトル抗菌薬使用時の
細菌培養実施率
1,252 1,054 84.19%

 複数菌腫に効果がある広域抗菌薬を使用し続けると、菌が耐性を獲得してしまうことがあります。細菌培養検査を行うことで、患者さんが感染している菌腫を同定して、菌種に対応したより狭い効果的な薬剤を使用することで耐性菌の発生を減らすことができます。そのため、広域抗菌薬を使用するときには、投与開始前に細菌培養検査を行う事が重要です。
 当院の特徴として 広域抗菌薬使用時には適切に細菌培養検査を行っており、高い実施率となっています。

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